【トランプ勝利】どうなる?ロシアのウクライナ侵略、「戦争を止める」発言にプーチン政権はどう反応したか
共和党内にはウクライナ支援を求める声も
しかし、一方で米共和党内には決して、ウクライナ支援をめぐっては一枚岩ではなく、ウクライナへの支援をさらに強め、ロシア軍を圧倒して「力による平和」をもたらすべきだという一派もいる。 その代表格がトランプ前政権時に国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏だろう。 ポンペオ氏は昨年3月にキーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談を果たした。トランプ氏の相次ぐ親露的な発言の中で、ゼレンスキー氏はその右腕だったポンペオ氏のキーウ訪問を歓迎し、「自由と民主主義のために」戦っているウクライナ人への強力な支援のシグナルになると評価した。 ポンペオ氏は段階的にしか最新鋭兵器を供与しないバイデン政権の姿勢を批判。「私たちが全てを終わらせるだけの支援を提供できるにもかかわらず、それを行っていないことは悲劇だ」と述べた。 ポンペオ氏は今年10月にも、ロシア領内の軍事基地への攻撃を容易にするためゼレンスキー氏が求める長射程兵器についても、この要求になかなか応じないことは「軍事的に愚かであり、戦略的にバカげたことであるように思える」とバイデン政権を非難してみせた。 今回の選挙では議会選も同時に行われ、上院は共和党が多数派を奪還、下院でも共和党が伸長を果たし、トランプ氏の次期政権運営に弾みをつけている。 共和党は、バイデン政権下で決めたアフガニスタンでの米軍完全撤退を非難している。撤退後にタリバン政権が弾圧を強化し、人権擁護や民主主義が後退したからだ。共和党内にも、もし米国がウクライナ支援から撤退すれば、「民主主義の空白」が起こりかねないとの危機感があるのも事実だ。 こうした背景から、ゼレンスキー政権は米大統領選挙においても、共和党内への働きかけを強めていた経緯がある。ゼレンスキー氏自身も9月に国連総会へ出席するため訪米した際に、トランプ氏との面会を果たしている。
〝異例の〟早さでゼレンスキーが祝福
現地時間6日午前にゼレンスキー氏がトランプ氏への大統領当選祝福メッセージを出したのは、異例だった。この時点で欧州で祝福メッセージを表明していたのは、親露派のハンガリーのヴィクトル・オルバン首相のみ。トランプ氏の強力な支援者だった米実業家、イーロン・マスク氏が運営する「X」での祝福表明は、まるで予定稿を用意し、あとはボタンを押すだけだったような印象を受ける。 ウクライナ語バージョンは国民向けに。そしてもう一つの英語バージョンはトランプ氏に選挙で投票した共和党支持者に対して向けられ、ウクライナ支援を継続してほしいと訴えたものだろう。 ゼレンスキー氏は祝福メッセージでこう訴えた。 「私は国際情勢において、トランプ氏が『力を通じた平和』のアプローチを果たそうとしていることを高く評価している。これはまさに、ウクライナで真の平和を実際にもたらすことを近づける原則であり、私たちは一緒にこのアクションを実行に移すことを期待している」 一方、今回の選挙結果についてプーチン政権の反応はどうだったのか? 大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は声明を出し、米国はロシアと戦っている「非友好国」であり、「プーチン大統領が歓迎のコメントを出す予定はまだない」と述べた。 トランプ氏がこれまで述べてきたのは選挙期間中の政治レトリックであり、実際に執務につけばどうなるかわからないというプーチン政権内での分析があるからだろう。実際に、プーチン大統領自身もバイデン氏の方が「経験豊富で予測可能な政治家」として再選を望んでいると発言したこともある。 ペスコフ氏は「米国はウクライナに対する外交政策の軌道を変えることができるが、それが行われるかどうかは(トランプ氏が就任する)来年1月以降に判明するだろう」とも語った。「戦争を止める」と宣言したトランプ氏の次なる一手が注目される。
佐々木正明