物流危機対策、まず急ぐべきは現状の「中継物流拠点」「共同配送」のフル活用だ!
もうひとつの切り札としての共同配送
2024年問題への対応やドライバーの労働環境改善の、もうひとつの切り札が 「共同配送」 である。特に地方ではその傾向が顕著であるが、人口減少や店舗減少により事業者ごとの配送は非効率になったといってもいい。今やライバルの事業者同士が手を結ばなければ、物すら運べないのだ。 広島では、広島市内で店舗を展開するスーパーが、同業他社に声をかけて共同配送の取り組みを行っている。特にフェリーを使用せざるを得ない島への輸送となると、共同配送による積載効率の向上は効果が高いといえる。 九州では、大手スーパーのイオン九州とトライアルホールディングスといった小売り事業者や運送会社が参画して九州物流研究会を立ち上げている。イオン九州とトライアルの2店舗の共同配送実験では、トラック1台1日あたりの走行距離が約30km削減できたという。今後は参画店舗を増やすことで、より走行距離の削減が見込まれるという。 もちろん、コンビニ業界も待ったなしだ。郊外よりさらに外の地域にドライブしたときに、ポツンとコンビニを見かけることがある。利用者としては非常にありがたいが、 「この店舗のためだけに、ここまで毎日配送しているの」 と非効率性をうすうす感じた人もいるだろう。 セブン―イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社は、既に実証実験を開始している。札幌にある各コンビニの基幹センターから函館のサテライトセンターまでの輸送では、1便あたり ・走行距離:275kmm(48%) ・時間:2.5時間(23%) の削減効果があったという。 ただ店舗への配送となると、発注のタイミングや配送時間など共同配送のハードルは高いそうだ。現状が各社で効率的な配送を追求した結果であることからすると、協業するには根本からの見直しが必要であり、やや厳しいといったところだろうか。
フィジカルインターネットの進化
中継物流拠点・共同配送は、物流効率化に向けて取り組まれているフィジカルインターネット(PI)の要素だ。 PIは、不特定多数の荷主企業が、運輸・倉庫といった物流事業者をあたかもインターネット回線のように利用する仕組みであり、次の三つの要素からなる。 ・コンテナ(輸送容器) ・ハブ(結節点) ・プロトコル(ルール) ハブ(結節点)は、中継物流拠点として整備が始まったばかりである。コンテナの規格化や統一化、マッチングアプリやルールなどのプロトコルの整備はこれからだ。となると、フルスペックのPIの実現は、もう少し先の未来といったところだろう。 とはいえ、現状の中継物流拠点や共同配送でもある程度の効果が得られるのであれば、途中段階の 「PI0.5」 でも十分と思えなくもない。物流分野における待ったなしの課題の解消に向けて、とにかくできることからやっていく姿勢が求められている。
本條光(物流ライター)