池上彰氏の番組内容「テレビで放送すべきではありません」「俗説中の俗説」批判の専門家を直撃
起きた理由は…人選ミスをしないための方法
それではなぜ、専門家が見れば「明らかに嘘」と分かる内容がテレビでもっともらしく紹介されてしまったのでしょうか。 「過去に何度か別の番組で【せっかちな江戸っ子】説を唱えている人がいたので、今回もその人の話を聞いたのではないでしょうか。大学名誉教授の肩書もある人で、番組の制作会社は『専門家だから間違いないだろう』と思ったのかもしれません。でも、ご当人の専門は日本語ではないようです」(飯間浩明さん) 素人がなにかしらの専門分野について取材したい場合、どの専門家が一番詳しいのか判断するのは難しいものです。今回の番組スタッフはどのように人選すべきだったのでしょうか? 「新聞社の人に聞いた方法ですが、まずは大学院生に『こういうことについて詳しい先生を知りませんか』と尋ねるというのです。なるほど、その方面の研究をしている院生ならば、妥当な人選ができますよね。SNSで情報を発信している院生も多いので、コンタクトを取ってはどうでしょう。 大学院生と知り合いになれなくても、複数の人にセカンドオピニオンを求める方法もあります。ある研究者の著作の内容が事実かどうか知りたいとき、その内容を別の専門家に当ててみるのです。複数の専門家が事実と認めれば、一応は正しいと考えてもいいでしょう」(飯間浩明さん)
言ってもいないことが放送!フェイクへの感度が鈍ってしまった現代
飯間さんは過去に、方言に関するテレビの取材に回答したところ、その回答から飛躍した内容を放送されてしまった経験があると言います。
「事前取材で、最近の女子高校生が自分を『わい』と呼ぶことについて、その『わい』はどこから出てきたのか?と聞かれました。 『関西を中心に青森から鹿児島まで全国で使われている方言なので、どこから来たとかは言えませんね』と答えたんです。ところが、実際に放送された番組を見ると、『女子高生の“わい”のルーツは青森方言!?』ということになっていました」(飯間浩明さん) なぜ言ってもいないことを放送されてしまったのでしょうか!? 「制作会社の人が、青森がルーツだったら面白いと思ったのではないでしょうか。どうせテレビなんて真面目に見ている人はいない、教育番組じゃないし、と考えているのではないかと疑います」(飯間浩明さん)