有山楓さん殺害20年、父「思いを出すことも出さないことも本当に辛い」…手記を公表
奈良市で2004年11月、小学1年の有山楓(かえで)さんが誘拐され、殺害された事件から17日で20年となり、楓さんの父・茂樹さん(50)が、奈良県警を通じて手記を寄せた。「楓の声が頭の中に響かなくなってきた」と明かし、「時間の経過が新たな悲しみや苦しみを生み出している」などとつづっている。手記全文は次の通り。
ことしで楓が被害に遭って20年がたちます。よく節目と言われますが、悲しみや後悔の思いは時間が過ぎようとも変わることはありません。警察署で再会した楓の表情、家の中の私たち家族へ向けられたフラッシュの嵐は今でも鮮明に記憶しているのに笑顔いっぱいの楓の写真を見て楓の言葉は思い出せても、元気な声が時間とともに頭の中に響かなくなってきました。当時の悲しみとは違い時間の経過が新たな悲しみや苦しみを生み出してきます。
楓がいない20年間、私は前に進まなければならないと必死にもがいてきましたが、一歩が本当に重く感じる毎日でした。それでも楓の生きた7年間だけでなく、今も楓への思いを忘れず、二度と悲しい事件を起こさない取り組みを継続してくれている多くの方に支えてもらい、気持ちだけは前を向いて進んでこられました。この20年が大切な時間であったと思えるのも、きっと楓が今も私のそばにいて、思いや縁をつないでくれたからだと思っています。
残された者の苦しみは言い表せません。思いを出すことも出さないことも本当に辛(つら)いものです。このような思いを誰にもしてほしくありません。行政、地域、学校による安全への取り組みが続くことを心より願います。
有山茂樹