大打者にお手上げ「いらんこと言うなぁ」 最強エースが苦戦…苦汁をなめた“観察眼”
4年目で球宴先発も初回に被弾…「落合さんが指示を出していたって話なんですよ」
印象に残っているのが、1987年のオールスターゲーム。星野氏は高卒4年目にして監督推薦で初出場した。シーズン前半は8勝5敗。4月14日の西武戦(西武)、4月22日の近鉄戦(日生)、6月23日の南海戦(大阪)、6月28日のロッテ戦(西宮)、7月10日の日本ハム戦(西宮)と、パ5球団から完封勝利を挙げるなど売り出し中の左腕として、7月25日の第1戦(西武)にパ・リーグの先発マウンドを任された。その時のことだ。 結果は2回31球、打者9人に被安打3、奪三振5、失点2。初回に3番の巨人・原辰徳内野手に先制2ランを浴びた。「原さんにカーブを打たれたんですけど、あれ、落合さんが全部指示を出していたって話なんですよ」と星野氏は言う。「後で誰かに聞いたんですけど、『絶対カーブが来るからカーブだけ待っとけ』と落合さんが全員に言っていたって。確かに先頭の(広島の)山崎(隆造)さんはストレートを見逃し三振だったんですよ……」。 まだ、交流戦などない時代。セ・リーグの打者は、台頭したばかりの星野氏のことをよく知らなかったようだ。そこで、ロッテ時代に対戦経験があった落合が、“星野対策”のアドバイスを送っていたのだろう。ちなみにこの試合でセの4番を務めた落合はカウント1-2から4球目、星野氏の内角直球を全く打つ気なしの見逃し三振。勝負球にカーブだけを待っていたかのような雰囲気を漂わせていた。 星野氏はセ・リーグの他の打者からもカーブ狙いを感じたそうで「いらんこと言うなぁ、落合さんって思いましたよ」と笑いながら振り返った。そんなことを含めても“相性”は最悪だったということか。「日本シリーズ(1996年のオリックス対巨人)でも僕は落合さんに打たれましたからね(第1戦に先制打)。何か遊ばれているような……」。苦手だった選手を聞かれれば、真っ先に落合の名前が浮かぶ。まさに大天敵だった。
山口真司 / Shinji Yamaguchi