「韓国の民主主義は死んでいない」尹錫悦大統領の弾劾訴追可決に市民歓喜
「韓国の民主主義はまだ死んでいない」「主権は国民にある」-。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の弾劾訴追が決まった14日夕、ソウル市の汝矣島(ヨイド)にある国会前はデモ参加者の歓喜の声に包まれた。強大な権力を安易に使った尹氏への国民の批判が強まり、一度は弾劾訴追案を廃案に持ち込んだ与党「国民の力」を追い詰めた。 【写真】韓国の尹錫悦大統領の弾劾訴追案が可決され、国会前で喜ぶ人たち 14日午後5時ごろ。国会議長による採決結果の読み上げが終わると、国会前の大型スクリーンを凝視していた市民は感情を爆発させ、歴史的な瞬間を喜んだ。聯合ニュースによると、国会周辺に集まった市民は、警察推計で7日を超える最大約20万8千人だった。 「歴史は正しい道に進むと、私たちが証明できてうれしい」。7日に弾劾案が廃案となった悔しい思いを抱え、再び汝矣島を訪れた女子大学生(20)=仁川市=は声を弾ませた。 男性会社員(43)=同市=は目を潤ませていた。「尹氏が軍統帥権者として職務を遂行できなくなり、良かった」と安堵(あんど)した。 非常戒厳の宣言後から続いた尹氏を批判するデモには、若い人や家族連れも多く参加。韓国メディアによると、乳幼児のおむつの交換などができる「キッズバス」も用意されたほどだ。 40代の女性=ソウル市=は、仲間のために約50人分ののり巻きを持ち込んでデモに加わった。「戒厳宣言は政治の一線を越えた判断だった。早く混乱が終わり、全てが元の位置に戻ってほしい」と願った。 罷免の判断は、憲法裁判所に託される。男性会社員(45)は「裁判官全員が、しっかりとした判断をするのか注視していく」という。今後は立法府から、憲法裁に市民デモの対象が移っていくとみられる。 一方で釜山市の70代男性は、尹氏を擁護するインターネット動画などを知人に送り、支持を広げようとしてきた。弾劾案が可決され「野党に政権が渡れば、誰が暴走を止められるのか」と不安視している。 ソウル中心部で開かれた尹氏を支持する保守層らの集会には、警察推計で約4万人が参加。弾劾案が可決されると参加者は頭を抱え、衝撃を受けていた。 ソウルを訪れていた主婦(59)=富川市=は静かに話した。「国民がデモ会場まで来て声を上げざるを得なかった現状を、与野党ともにしっかり見てほしい」 (ソウル平山成美)