【Playback箱根駅伝】96回/青学大が超高速レースを制し、王座奪還! 7区間で13人が区間新
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの) 第96回箱根駅伝総合成績をチェック!
第96回(2020年/令和2年) 2区で相澤が驚異の1時間5分台 館澤が山下りで大幅区間新
令和最初の箱根は激戦が予想された。出雲は新鋭の國學院大が初優勝し、全日本は箱根王者の東海大が16年ぶりV。箱根の連続優勝が「4」で途切れた青学大は、出雲こそ5位に終わったものの、全日本は2位と勢いを取り戻しつつあった。 10月の予選会では筑波大が6位に入り、26年ぶりの本戦出場権を獲得。第1回大会(1920年)の優勝校・東京高師を前身とする大学が、100年後のレースに参戦することになった。 1区はスタートから速いペースで展開したものの、18km過ぎの六郷橋ではまだ9人が先頭グループを形成。中継所まで残り500mを切ったところで創価大の米満怜(4年)が先頭へ立ち、区間歴代2位タイの1時間1分13秒でチーム初となる区間賞獲得とトップ中継を果たした。 5秒差の2位は國學院大で、日体大をはさみ、前回王者の東海大がトップから10秒差の4位中継。青学大は18秒差の7位、東洋大は2年連続区間賞の西山和弥(3年)が2分02秒差の14位と大きく出遅れた。 2区では最大7校が先頭争いを繰り広げる。終盤には4校(國學院大、東海大、青学大、早大)に絞られ、青学大の1年生・岸本大紀がトップ中継を果たした。 その後方では14位スタートの東洋大・相澤晃(4年)が13秒先に出た東京国際大・伊藤達彦(4年)に追いつくとそのまま並走。ハイペースの鍔迫り合いで抜きつ抜かれつの名勝負を繰り広げた。相澤の勢いは最後まで衰えず、20km過ぎで伊藤を振り切り、7位で中継。区間記録を11年ぶりに更新する1時間5分57秒の特大区間新を叩き出した。相澤には及ばなかったものの、伊藤も1時間6分18秒(区間2位タイ)をマーク。前回大会で塩尻和也(順大)が出した日本人最高記録(1時間6分45秒)を大幅に上回った。 超高速レースは3区も続いた。その主役は東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(1年)。11km過ぎに先頭の青学大を抜き去ると、その後は独走。従来の区間記録を2分01秒も更新する衝撃の59分25秒で駆け抜け、初の首位中継を果たした。青学大は1分21秒差の2位。3位は戸塚から順位を1つ上げた國學院大。4位は帝京大で、遠藤大地(2年)が従来の区間記録を3秒上回る1時間1分23秒をマーク。また、駒大のルーキー・田澤廉も区間記録から1秒速いタイムで、13位から6位に進出した。 4区では青学大が主役の座を取り戻した。最終学年にして箱根初出場の吉田祐也(4年)が14km手前で東京国際大を逆転。相澤が前年マークした区間記録(1時間0分54秒)を更新する1時間0分30秒で走破し、2位・東京国際大とは1分02秒差とした。3位は変わらず國學院大、4位は東海大で、帝京大は5位。往路2連覇中の東洋大は、3区で10位に下がると、4区は区間最下位で14位まで後退。青学大とは8分14秒差をつけられ、往路3連覇は絶望的となった。 青学大の安定したレースは山でも変わらない。5区初挑戦の飯田貴之(2年)は区間新が狙えるペースで駆け上がり、後続との差を広げて3年ぶりの往路優勝。前年の東洋大の往路記録を5分15秒も更新する5時間21分16秒をマークした。 2位の國學院大、3位の東京国際大、7位の創価大は往路の自校最高成績。前回王者の東海大は3分22秒差の4位で終えた。個人では東洋大の宮下隼人(2年)が区間新記録の1時間10分25秒で制し、苦戦するチームを14位から11位に押し上げた。また、区間2位の青学大・飯田、3位の國學院大・浦野雄平(4年)も区間記録を上回った。 6区では青学大・谷野航平(4年)が安定したペースを刻み、首位をキープ。2位・國學院大との差を1分33秒から2分16秒まで拡大した。逆転優勝を狙う4位・東海大は館澤亨次(4年)を起用。区間記録を40秒も更新する57分17秒をマークし、青学大とは2分21秒差、國學院大には5秒差まで迫る3位に浮上した。また、3年連続6区となった東洋大・今西駿介(4年)も従来の区間記録を23秒上回り、7位に躍進した。 大きな貯金をもらった青学大の7区・中村友哉(4年)は終始、危なげない走りでトップを守った。3位の東海大は12km過ぎで2位の國學院大を抜くが、青学大とは20秒詰めただけ。5位で中継所を飛び出した明大・阿部弘輝(4年)は区間新のペースで追い上げ、12km過ぎで東京国際大をかわし、4位に浮上。そのままハイペースを保って区間記録を36秒更新する1時間1分40秒で他を圧倒した。 8区も青学大の堅実な走りは揺るがない。岩見秀哉(3年)は、区間記録保持者の東海大・小松陽平(4年)に区間賞こそ譲ったものの、リードは2分00秒と、逆転劇の気配はない。後方では國學院大が明大から3位を奪い返した。 終盤にさしかかる9区で青学大・神林勇太(3年)がダメ押しの区間賞。2位・東海大との差を3分42秒まで拡大し、総合優勝をほぼ決定づけた。10区の湯原慶吾(2年)は悠々と独走。青学大は4区以降、一度も先頭を譲ることなく、10時間45分23秒で2年ぶり5回目の総合優勝を遂げた。 東海大は連覇を逃したものの、大会新の10時間48分25秒で2位フィニッシュ。復路成績では新記録の5時間23分47秒を叩き出し、青学大を抑えて初の復路優勝を手にした。3位は國學院大。10区で4チームが争う激戦を制し、大学最高成績を挙げた。4位は帝京大で大学最高タイ、5位の東京国際大も大学最高成績と初のシード権獲得となった。 駒大が8位、東洋大が10位と上位候補が低迷したのを尻目に、創価大が初のシード権獲得となる9位に入った。アンカーの嶋津雄大(2年)は13年ぶりの区間新となる1時間8分40秒で、11位から順位を上げた。代わって11位に転落した中央学大は6年ぶりにシードを失った。金栗四三杯は2区区間新の相澤が受賞した。
月陸編集部