凱旋、團十郎さん威風堂々 小松で襲名披露巡業、千秋楽
●「父が大事にした場所」 十三代目市川團十郎白猿(だんじゅうろうはくえん)襲名披露巡業は27日、石川県小松市團十郎芸術劇場うららで行われた小松公演(北國新聞社主催)で千秋楽を迎えた。自らの名を冠し、巡業の開幕を飾った劇場に「凱旋」した團十郎さん。口上では「小松は父が大事にした場所。代々の團十郎に顔向けできる團十郎になれるよう、精進する覚悟でございます」と改めて決意を語り、威風堂々とした姿で喝采を浴びた。 【写真】團十郎さん(中央)が熱演を見せた「河内山」 26日の金沢に続く石川公演で、昨春に小松を皮切りに始まった全国巡業の締めくくりとして2回の公演が行われた。 口上で團十郎さんは、父である十二代が安宅の地で勧進帳を演じる夢を抱いていたことや、うららの設計に携わったことを回顧。「小松で千秋楽を迎えられたことを父も喜んでいると思う。できれば、このうららで1カ月公演をしてみたい」と小松への深い思い入れを語った。 人間国宝中村梅玉さんも口上を述べ、「すっかり團十郎の名跡を自分のものとしている。今後も歌舞伎界の先頭に立って導いてほしい」と期待した。 舞台は市川右團次さん、市川九團次さん、大谷廣松さん、片岡市蔵さんの「祝(いわう)成田櫓賑(なりたしばいのにぎわい)」で幕を開け、口上に続いて代々の團十郎が演じてきた「河内山(こうちやま)」が披露された。 「河内山」は江戸城で茶席の世話をする数寄屋坊主の河内山宗俊が、大名家に幽閉された質屋の娘の奪還を金で請け負う筋書き。團十郎さんは高僧に化けた河内山を演じ、梅玉さん扮(ふん)する大名・松江出雲守を脅す場面や、正体を見破られて七五調のせりふでたんかを切る姿を熱演した。 地元ゆかりの十三代の晴れ舞台とあって、会場には多くの人が詰め掛け、團十郎さんの多彩な表情や声色に沸いた。 初めて本格的な歌舞伎の舞台を鑑賞したという東佳子さん(60)=小松市長田町=は「小松を特別に思い、大事にしていただいて光栄だ」としみじみ語り、金沢市久安1丁目の橘輝美さん(64)は「(小松や石川との)ご縁を感じてうれしい」と笑顔を見せた。