「会計時に自然と涙が」不妊治療の末、コロナ禍で長女を授かった内山信二「自分でもとまどいました」
── 体外受精が1回で成功する確率は高くはないと言います。とても恵まれたケースですね。 内山さん:本当に奇跡的です。嬉しかったのと同時に、不妊治療のクリニックに行ったことで、いろいろなことを考えさせられるようになりましたね。女性に対して「子ども作らないの?」なんて気安く言っちゃいけないんだ、ということも知ったというか。それまではそういうことを見聞きしても特別何とも思わなかったけれど、実際の現場を見て本当に痛感させられて。ほしくてもなかなかできない人たちがこんなにもいることが、自分が当事者になってわかりました。自分たちは奇跡的に1回でできましたけど、もしかするとそうなっていたかもしれないわけですから。
■「無事に生まれた奇跡」涙が止まりませんでした ── お子さんは2人とも女の子ですね。 内山さん:長女が絃(いと)ちゃんで、2022年1月に生まれました。次女は謡(うた)ちゃんで、今年の3月に生まれています。長女は逆子だったので帝王切開で生まれていて、出産の立ち会いはできませんでした。そもそも長女のときはまだコロナ禍で、病院内でも立ち入れない場所がかなりあって。いざ生まれても、手術室から新生児室に運ばれていく途中でチラッと目にしただけ。そのときはすれ違いざまに、写真をパパッと撮って終わっちゃいました。正直なところ、まだ実感はなかったですね。とりあえず無事に生まれてよかったな、って。
── パパになった実感を持ったのはいつごろですか? 内山さん:生まれてから1週間後、退院するとき病院で初めてわが子を抱っこできました。奥さんが会計しているのを待っていたら、知らずと涙があふれてきて。自分でもとまどいました。たぶんそこで初めて感動できたんだと思います。コロナ禍の制限があるなかで無事に生まれたという安堵もあっただろうし、コロナにならなくてよかったとか、体外受精だとか、帝王切開だとか、いろいろなことを踏まえてよかったなっていうことだと思うんですけど。自分でもよくわからない、なんだか不思議な涙でした。うれしいとか悲しいじゃなくて、自然と涙が流れて止まらなくなったのは、初めてでした。
PROFILE 内山信二さん うちやま・しんじ。1981年生まれ、東京都出身。6歳でバラエティ番組『あっぱれさんま大先生』にレギュラー出演。以降タレント、俳優としても幅広く活動。映画『秘密』、『TAKESHIS’』、『鋼の錬金術師』ほか。ドラマ『ごくせん』シリーズ、『ヤスコとケンジ』、『一休さん2』 NHK連続テレビ小説『天うらら』、BS時代劇『一路』等に出演。 取材・文/小野寺悦子 写真提供/SHUプロモーション
小野寺悦子