立川志のぽんさん、春風亭昇咲さん ごひいき願います!
「“慣れない”者が“成れる”」──春風亭昇咲
「初めて来た人に落語の面白さを伝えたい」目標として掲げる理想を如何に形にするのか、それにはどう思考し実践してゆくべきかを日夜求め続ける姿勢は一際目を引く。表現者には余分なものを極力排除しながら深度を意識して縦方向に進むタイプとアンテナを張り巡らし様々な要素を取り込み横方向に斬っていく2つのタイプがいる。どちらが正解ということではなくチームスポーツに於ける最適なポジションと同じく最大限に自分の能力を出力できるやり方を見つけることである。春風亭昇咲さんは間違いなく後者である。 2016年3月春風亭昇太師匠に入門、8月より楽屋入りし2020年9月二ツ目昇進と同時に落語芸術協会所属の若手ユニット√9に参加、期待の新作落語家のひとりに数えられる。さらに今年に入ってから√9で活動を共にする昔昔亭昇さん、笑福亭茶光さん、そして上方落語の逸材・桂九ノ一さんを加えた4人で笑いに特化した新たな落語会『わらいばなし』を自ら立ち上げるなど積極的に表現の幅を拡げている。幼稚園から大学まではサッカー一筋、卒業後も指導員資格を活かしスポーツ関連の仕事に就くことを考えていたが同時にお笑いにも興味があったことから放送作家などの裏方として関わることに意識が向く。その後自分の特性を分析した結果、じっくり時間と手間をかけて創作をしたい気持ちが膨らんだことと何よりも落語表現には無限の可能性を感じ厳しい修業は承知の上で落語家になることを決めた。入門後は第一線の落語家でありまた映画や演劇と様々なジャンルで活躍する師匠の元で4年間前座修業をしながら勉強を重ねていった。 昇太師匠は自分が知る落語家の中でもプロ中のプロと感嘆するほど“落語家としての在り方”を的確に捉える客観的視点とストレートな表現力のバランスがずば抜けている。落語に対しての向き合い方を見ていると昇咲さんは師匠にとても近いセンスがあると感じる。外の世界を体感し自身の表現にフィードバックさせることはとても重要な要素である。加えて元々は内省的な性格というのも良い結果に繋がり易い。何故なら不確定要素が多い表現に於いては評価の所在を外に求めずキチンと自分の中で修正できるからだ。落語に確りと軸足を置きどんな環境にも慣れることを知らない昇咲さんは他ジャンルと積極的に関わることできっと今までにない落語家になれるはず。ようは“慣れない”表現者だけが目指す者に“成れる”のだ。 文・撮影=橘蓮二 <立川志のぽん 公演予定> ■年の瀬に、藤堂教授と白餅を聞く会 2024年12月29日(土) 東京・神田連雀亭 開場 17:30 / 開演 18:00 予約:1500円 / 当日:2000円 出演:立川志のぽん、藤堂高直(タイ国立チュラロンコーン大学客員教授、建築デザイナー、陶芸家) ■志のぽんの背伸びと寸法直し・折り返し! 2025年1月18日(土) 東京・神田連雀亭 開場 17:45 / 開演 18:15 予約:2000 / 当日:2200円 出演:立川志のぽん <春風亭昇咲 公演予定> ■ 連雀亭 正月特別興行 2025年1月3日(金) 東京・連雀亭 開場 13:30 / 開演 14:00 ■グリーンホール寄席「精鋭二人会」 2025年1月7日(火) 東京・グリーンホール環七野方 開場 15:30 / 開演 16:00 ◾️新宿末廣亭正月初席 昼席 2025年1月8日(水) 東京・新宿末廣亭 ◾️上野広小路亭しのばず寄席 2025年1月12日(日) 東京・ お江戸上野広小路亭 ◾️浅草演芸ホール二ノ席 昼席 2025年1月14日(火)、17日(金) 東京・浅草演芸ホール ◾️ルート9 in 花座 2025年1月19日(土)・20日(日) 宮城・花座 ◾️連雀亭 昼席 2025年1月26日(日) 東京・連雀亭 ■第3回 わらいばなし~ただ笑える落語だけをする落語会~ 2025年1月27日(月) 東京・下北沢・シアター711 開場 18:30 / 開演 19:00 <プロフィール> 橘蓮二(たちばな・れんじ) 1961年生まれ。95年より演芸写真家として活動を始める。人物、落語・演芸を中心に雑誌などで活動中。著書は『橘蓮二写真集 噺家 柳家小三治』『喬太郎のいる風景』など多数。作品を中心にした「Pen+」MOOK『蓮二のレンズ』(Pen+)も出版されている。落語公演のプロデュースも多く手がける。近著は『演芸場で会いましょう 本日の高座 その弐』(講談社)。