【視点】トランプ氏再選 超大国の責任果たせ
米大統領選は、激戦州を立て続けに制した共和党トランプ前大統領の再選が決まった。すべての開票結果はまだ判明していないが、6日の時点で、一部メディアはトランプ氏の当選確実を報じた。トランプ氏も支持者の集会で勝利を宣言した。 トランプ氏に関し、日本では、自国の利益を最優先にする「アメリカ・ファースト」の政治を推し進めるとの警戒感が強い。 同盟国を無視し、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席といった独裁者と「ディール」(取り引き)を行い、ウクライナや台湾を見捨てるのではないかと懸念する報道もある。中東でハマスと戦うイスラエルの支援を明確にしていることへの反発も根強い。 一方、トランプ氏は既に大統領を一期経験しており、任期中に戦争を起こさなかったと評価する声もある。トランプ氏は一期目も「予測不能」と言われたが、結果的にトランプ政権下でも米国は国際社会を主導し続けた。 米国がいくら「アメリカ・ファースト」路線に回帰すると言っても、同盟国を裏切ったり、見捨てたりする外交姿勢を取り続ければ、民主主義諸国のリーダーとしての米国の国際的権威は地に堕ちる。 目先の損得勘定にとらわれず、超大国としての責任を果たすことが米国の究極的な国益につながる。トランプ氏は職業的政治家ではなくビジネスマン出身だが、3回連続して大統領候補に選ばれるほどの人物であれば、その理屈は理解できるのではないか。 任期中に戦争を起こさなかったのも、人命や財産の損失につながる戦争は経済的合理性から割に合わない、とビジネスマンらしく直感していることが理由かも知れない。 トランプ氏は大統領在任中、北朝鮮指導者の金正恩氏と電撃的に会談するなど、政権トップ同士のディールを好む傾向があった。 大統領に復帰すれば、ウクライナ戦争、ガザでの紛争、さらには緊張が高まる台湾情勢に関しても、ロシア、イスラエル、中国の首脳と何らかの直接交渉を試みる可能性は十分ある。 いずれの地域でも現状、バイデン政権では情勢の劇的な改善が見られないだけに、トランプ第二次政権に一定の期待感を持つことは可能だろう。 日本でも物価高騰が問題になっているが、米国の有権者がバイデン政権への不満を募らせた大きな原因がインフレだと言われている。 トランプ氏は大規模減税などで国民の負担軽減を図るとともに、企業活動を促進する政策を打ち出している。経済政策に対する有権者の評価は、対立候補である民主党ハリス副大統領を上回った。 米国経済は日本経済の好不調にも大きく影響するだけに、まずはトランプ氏の手腕を見守りたい。 沖縄の米軍基地問題に関しては、結果的に第一次トランプ政権、バイデン政権に大きな違いはなかった。米軍普天間飛行場の辺野古移設をはじめとする米軍再編計画については、トランプ政権が復活しても、従来の方針通り進む可能性が高そうだ。 注目点があるとすれば、石破茂首相が意欲を示す日米地位協定の改定だろう。米側が難色を示すことは必至と言われているが、石破首相と大統領に返り咲いたトランプ氏の「ディール」によっては、現実味を帯びるかも知れない。