【個別避難計画】弱者支援へ対応急務(9月10日)
災害時に自力での避難が困難な高齢者や障害者らの個別避難計画づくりが進んでいない。県は、市町村に担当者を個別に派遣して助言するなど支援を強化する方針だが、大規模災害が頻発し、計画の必要性は高まっている。制度への理解を広め、対応を加速させる必要がある。 計画策定は、2021(令和3)年施行の改正災害対策基本法で市町村の努力義務とされた。体が不自由といった避難時に助けが必要な人の氏名や住所などに加え、避難指示が出た際に安否を確認したり、避難に同行したりする支援者や、避難経路などを盛り込むよう定めている。 県によると、県内の対象者は14万3092人に上るが、策定済みは約1割の1万5376人にとどまる。59市町村のうち策定を終えたのは天栄、只見、南会津、会津坂下の4町村。残る55市町村は要支援者の一部のみで多くの未策定者を抱える。最多の郡山市は3万6601人のうち3万6590人分(99・9%)、福島市は2万4059人のうち2万3581人分(98・0%)、いわき市は1万4203人のうち1万3881人分(97・7%)に達する。
県は、市町村の人手不足が策定遅れの理由の一つとみている。福島市は介護事業者らに業務委託し、昨年度は約200人分を整えた。併せて、地区説明会で計画策定への協力を求めている。ただ、山間部や河川から離れた災害危険性の高くない地域では「計画は必要ない」との声も上がり、地区内の完了に半年以上を要する例もあるという。 要支援者が健康状態などの個人情報を支援者と共有するのをためらい、計画づくりを拒む場合もある。計画の重要性を認識してもらうには、想定を超える災害が相次ぎ、身の危険性が高まっている現状に理解を求める必要がある。 支援者をどう確保するかも大きな課題だ。要支援者の意向も踏まえ、身近な民生委員らが担う例が多い一方で、責任を重く感じ、引き受けたがらない人も少なくない。内閣府によると、支援者は災害発生に際して自身と家族の安全を優先できる。要支援者には避難指示が出たときに知らせるなど、可能な範囲の対応でよいとされる。こうした負担感を軽減する丁寧な説明も重要だろう。(渡部総一郎)