センバツ2022 準決勝 近江、県勢初の決勝へ 粘りの野球、ここにあり /滋賀
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第10日の30日、近江は準決勝で浦和学院(埼玉)と対戦した。2-2の同点で迎えた延長十一回裏、大橋が左翼席に飛び込むサヨナラ本塁打を放ち、劇的な勝利で決勝進出を決めた。県勢が甲子園決勝に進むのは、2001年夏に近江が準優勝して以来で、センバツでは初めて。サヨナラ勝ちの歓喜に沸くアルプススタンドでは、涙を流す保護者や生徒も多く見られた。決勝戦は31日午後0時半から、大阪桐蔭(大阪)と対戦する。【礒野健一、山口一朗】 県勢初のセンバツ準決勝の舞台。マウンドには初戦からの3試合と同じく、エースの山田が立った。三回まで無失点と順調だったが、四回に連打を浴びて2点を失い、なお1死二、三塁のピンチを迎える。ここで次打者の三塁線へのライナーを、三塁手の中瀬が倒れ込みながら好捕。ベースに手を伸ばして三塁ランナーもアウト。この併殺で相手に傾いた流れを断ち切った。 中瀬は直後の攻撃で先頭打者として四球で出塁。1死から岡崎の適時二塁打で一気にホームインする好走を見せた。中瀬の父勝美さん(44)は「なんとかしようという気持ちが出ていた」と活躍に目を細めた。 五回裏、山田が左足に死球を受けて一時退場するアクシデントが襲う。応援席に動揺が走るが、山田がマウンドに戻ると、大きな拍手がわき起こった。時折、足を引きずるような仕草をしながら力投するエースに応えたい打線は、七回に先頭の津田が二塁打で出塁し、バントで三塁へ。中瀬がスクイズを決め、同点とした。津田は「山田の死球で野手も動揺したが、その山田が一番気合が入っていて僕らもスイッチが入った。スクイズは転がしてくれれば絶対にセーフになる自信があった」と話した。 その後は互いに堅い守りで得点を許さず、延長戦へ。十一回裏、途中出場の石浦に続き、川元が安打を放って1死一、二塁の好機を作ると、打席に山田の好投を支えた捕手・大橋。中学時代に所属していた湖北ボーイズ主将の磯谷哉斗さん(14)は「憧れの場所で一生懸命頑張る姿はかっこいい」と、先輩の一打を期待した。 2球目をフルスイングした大橋の打球は三塁側アルプスの大応援団の目の前で弧を描き、左翼スタンドに飛び込むサヨナラ本塁打に。球場全体がどよめきに包まれた。 大橋は試合後「打席に入るとスタンドの応援が耳に入り、力に変わった。小学校から野球をしているが、柵越えの本塁打は初めて。気持ちよかった」と笑顔を見せた。大橋の父博文さん(48)は「入れ、入れと祈った。すごい。ありがとう」と涙を流してヒーローとなった息子を見つめていた。強さに勢いも加わった近江ブルーの選手たちが、悲願の日本一へ突き進む。