『信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―』永青文庫で 新発見文書を含む織田信長の手紙60通を公開
東京・文京区に所在する永青文庫は、肥後熊本の藩主・細川家伝来の美術工芸品や歴史資料を収蔵・展示する東京で唯一の大名家の美術館。なかでも、戦国武将・織田信長の手紙60通の文書群は質量ともに突出したコレクションといえる。この貴重な歴史資料を通じて、真の信長像に迫る意欲的な企画展が、熊本大学永青文庫研究センターとの共催で、10月5日(土)から12月1日(日)まで開催される。 【全ての画像】重要文化財《織田信長朱印状》ほか広報用画像(全6枚) 永青文庫が所蔵する信長の手紙の大半は、細川家初代・藤孝に宛てて出されたものだそうだ。当初は室町幕府15代将軍・足利義昭に仕えていた藤孝は、義昭と信長が対立するようになると、同い年の信長を主君として選び、戦の最前線で信長を支え続けた。藤孝の嫡男・忠興も、信長のもとで武勲をたて、また信長の斡旋で明智光秀の娘・玉(ガラシャ)を妻として迎えている。 現存数が約800通の信長の手紙のうち、永青文庫が60通ものまとまった数を所蔵するに至った理由は、後に熊本を治めることになった細川家三代・忠利が、祖父・藤孝の武功を証明すべく、「信長の感状が埋もれてしまうのは惜しい」と蒐集に情熱を傾けたからだという。 同展の見どころのひとつは、重要文化財に指定されている59通と近年の調査によって新たに発見された1通の計60通が、展示替えを交えつつ、すべて展示されることだ。室町幕府の滅亡から、一向一揆との死闘、武田勢に勝利した長篠合戦、度重なる家臣たちの裏切り、そして光秀による本能寺の変まで、信長の激動の10年間を、配下の藤孝らの動向とともに丁寧に読み解くことで、信長の真の姿が浮かび上がるとともに、リアルな日本史が見えてくる。革新的、破天荒、残虐といった信長のイメージは真実なのか、そんな疑問に答えてくれる展観が興味深い。 ちなみに、「信長の手紙」といっても、原則として筆をとるのは「右筆(ゆうひつ)」と呼ばれる書記官だったそうだ。信長の直筆であることが確実な唯一の手紙は、細川忠興に宛てた《織田信長自筆感状》1通のみ。同展は、信長のその豪快な筆運びを実際に目にできる貴重な機会であるとともに、信長や藤孝・忠興ゆかりの美術工芸品も鑑賞できる目にも楽しい展覧会となっている。 <開催概要> 『令和6年度秋季展 信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―』 会期:2024年10月5日(土)~2024年12月1日(日) ※会期中展示替えあり 会場:永青文庫