福島県郡山市の小さな森の和美術館 「アトリエ民泊」事業スタートへ 芸術家や美術愛好者向け
古民家を再生した福島県郡山市西田町の「小さな森の和(やわらぎ)美術館」は12日にも、芸術家や美術愛好者が泊まれる「アトリエ民泊」事業を始める。芸術家に腰を据えて制作に励んでもらうとともに、館内で作品を展示・販売できるようにして収入やファンの確保を支える。愛好者は宿泊しながら、ゆっくりと多くの作品を鑑賞できる。館長の大島和子さん(67)は「温かく、人のつながりを感じられる場所にしたい」と準備を進めている。 新型コロナ禍や不況によるギャラリーの閉鎖などで作品発表の場が減っている中、芸術の道を志す若い人らに展示スペースと制作拠点の両方を提供する。作品は絵画、小物、詩など種類を問わない。プロや趣味で活動する人が利用できる。 作品を展示した1、2階の計3部屋を用意する。絵画、彫刻など約300点を所蔵する作品庫とシャワー室を設ける。豊かな自然とアートを楽しめる場所として人を呼び込み、地元の飲食店や入浴施設も周遊してもらう。地域に多く残る古民家の再生モデルとしても発信する考えだ。
大島さんは東京都出身。中学2年の時に郡山市へ引っ越し、母の実家だった現在の美術館の建物に住んでいた時期もあった。須賀川市の福祉施設に勤めていた40歳の頃、市内のギャラリーで矢吹町の画家長田良夫さんと出会った。絵や本について語り合うなど親交を深める中で絵画の収集が趣味になった。2014(平成26)年に美術館を開館し、長田さんの個展も企画した。 2020(令和2)年9月、長田さんは交通事故により88歳で他界した。遺族から、多数残された作品の整理を頼まれた。多彩な色使いが魅力で、いつも癒やされてきた。美術館の部屋には長田さんの作品も約20~30点展示する予定だ。「多くの人に長田さんの作品に触れてほしい。長田さんの絵から発想を得て生まれる作品も見てみたい」と願っている。