配偶者に先立たれた高齢者の「住まい」問題 “介護保険を申請するほどでない”ならサ高住が選択肢、自宅なら行政・民間サービスの活用を
どんなに仲睦まじい夫婦でも、いつか死別する日が来る。その事実から目を背け続けていると、いざ配偶者に先立たれた時、押し寄せる数多の難題に対処できない。ひとりになったらどう生きるか、今のうちに夫婦で話し合い、準備を始めなければならない。 【表】お金や生活の不安に対する準備 夫婦で始める「ひとりに備える」手続き
ひとりの生活を考えるうえで、避けて通れないのが住まいの問題だ。FPで介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏が指摘する。 「60歳を過ぎてひとり暮らしになった人の多くが、『自分はいつまでこの家に住めるのだろう』という不安を抱えています。『体が動くうちは、長年暮らしたわが家に住み続けたい』と望む人は多いのですが、体調や安全面を考慮して施設への入居を検討しなければならないケースもある。 問題はいざひとりになってから住まいについて考えても遅いということ。自宅のバリアフリー工事や施設の入居に際して発生する多額の費用、そもそも施設の入居条件に合わないなど、住まいの問題は予想外のことが多々起きる。だからこそ、配偶者が亡くなった後はどこでどう暮らすか、夫婦で事前に決めておくことが大切です」 歳を重ねるごとに、「日常生活がままならなくなる」ことも起こりうる。 前出・太田氏が語る。 「ひとつは食事の問題。ひとり身だとだんだん自炊が面倒になり、スーパー、コンビニの惣菜や冷凍食品頼りで体調管理が行き届かず、持病を悪化させてしまうこともあります。 また、部屋の掃除や庭の手入れが億劫になって、自宅がゴミ屋敷化するケースも少なくありません。そうなると、宅内での転倒事故や火災など、深刻な事態につながるリスクが高まります」 近くに頼れる人がいない場合はなおさら、夫婦が元気なうちに住まいの備えを万全にし、「日常生活での異変や不安を感じた際は早めに行動に移すべき」だと太田氏は進言する。
介護保険を申請するほどでもなければ「サ高住」が選択肢
「足腰が悪く転倒しやすくなったとか、火の始末に不安があると感じるようになった夫婦は、早めに入居する施設を検討しておくのもいい。 介護保険を申請するほどでもない場合は、『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』などの住宅型が選択肢となります。サ高住は“賃貸住宅でのひとり暮らし”に近いイメージ。『安否確認』や『生活相談』の基本サービスに加え、オプション次第で食事や洗濯、介護サービスを受けることも可能です」 住宅型サ高住の月額基本料は8万~20万円程度。施設により幅があるが、入居一時金不要なので、「会社員や公務員など一定の年金収入があれば、預貯金など老後資産を確保しつつ暮らせるケースも多いでしょう」(太田氏)という。 年齢や体調次第では、「介護付き有料老人ホーム」への入居も視野に入る。 「『介護付きホームに入るようになったら人生終わり』と拒否感を抱く人もいますが、3食バランスの良い食事が提供され、訪問診療やリハビリも受けられる。レクリエーションやスタッフとの会話を通じ、孤立感も解消されます。ひとりの生活より、むしろQOL(生活の質)が向上するケースが多いことも考慮すべきでしょう」(同前)