日本列島を縦断する進路が予想される台風10号を懸念し、石川、富山のホテル・旅館、飲食店でキャンセルが相次いでいる。北陸に最接近するのは9月1日から2日にかけてとみられるが、当初の想定よりも動きが遅く、影響を受ける期間が拡大。夏休み最終盤、1日の国の観光支援策「いしかわ応援旅行割」の再開に合わせ、活況を見込んでいた関係者は「商売あがったり」とため息を漏らした。 　金沢ニューグランドホテル（金沢市）は27～31日のキャンセルが約100人となり、担当者は「早く通り過ぎてくれれば予約も入り出すのに」と恨み節をこぼした。ホテル日航金沢（同）でも1日当たり数十件の予約が取り消された。担当者は「進路が変わりやすく、広範囲でキャンセルが出ている。かなり痛い」と嘆く。 　加賀市山代温泉の旅館「たちばな四季亭」では、30、31日の約20人分の予約がキャンセルや延期となった。加賀市柴山町のホテルアローレでも29～31日のキャンセルが増加。担当者は「台風がなかなか来ないので、さらに影響が出ないか、やきもきしている」と話した。 　富山県内では、9月1～3日に富山市八尾地域で「越中八尾おわら風の盆」が開催され、例年大勢の宿泊客が予約しており、関係者は「稼ぎ時につらい」と頭を抱える。 　ホテルグランテラス富山（富山市）は31、1日の宿泊取りやめが10件以上となった。両日は9割を超える充足率だっただけに、担当者は「新規も入りづらく厳しい状況だ」と肩を落とした。 　ANAクラウンプラザホテル富山（同）には先週から問い合わせが目立つようになった。例年、風の盆の開催期間は満室に近いが「これ以上キャンセルが出ないと信じて準備するしかない」と話した。 　飲食店にも影響が出ている。金沢市柿木畠などで「あまつぼ」を営む雨坪毅樹社長は、台風が近づくタイミングが遅れるのに合わせ、キャンセルが入る日も増えているとし、「こんな台風は初めて。夏休み終盤のかき入れ時なのに…」とどんよりとした空を恨めしそうに見上げる。 　同市片町2丁目の「割烹たけし」でも団体の会合や遠方から訪れる親類をもてなす地元客の予約がなくなった。桂木健至大将は「まだ直撃しとる訳でもないのに」とこぼした。