《ニュースを追って》大洗・涸沼川の洪水対策 26年度までに半数超移転 町、地主らに協力要請 茨城
涸沼川の水害を回避するため茨城県大洗町の堀割、五反田両地区で進められている防災集団移転促進事業(防集)で、町は2026年度までに移住対象の計72戸のうち36戸以上の移住を見込めるよう、住民と移転先となる土地所有者に協力を求める。町は一律にでなく、条件の整った住民と順次移転の契約を結び、34年度までに全戸を移住できるよう事業を加速したい考えだ。町は住民の合意形成のサポートや、移転先となる土地の洗い出しなどに力を注ぐ。 両地区では堤防のない涸沼川沿いに、住宅が並ぶ。那珂川河口から逆流する水があふれやすく、19年10月の東日本台風では約100棟が浸水した。町は本年度、両地区の災害危険区域(約6万7千平方メートル)に住む72世帯を、町内の市街地に点在する空き地に移住させる防集に乗り出した。 しかし住民は移転先となる土地探しに苦心している。町も事業の円滑化を急いでいる。事業費の9割を負担する国の補助を受けるためには、町の定める移転先に半数以上が移り住む必要があるからだ。 22日、町と地元住民との話し合いが堀割集会所(同町磯浜町)で開かれた。住民側は35戸40人が集まった。町の担当者は、防集で国の補助を得る必要性を指摘した上で、本年度は10戸、25年度に13戸、26年度に20戸の移転を進める計画を説明。さらに来年度以降、条件の整った住民から順次、移住対象者を具体的に絞り込む新たな事業の進め方について提案した。 町は当初、対象者が移転の補償調査を終えた後に、移転先探し▽移転先の地主の売却意思を確認▽その年度の移転対象者を決定▽町が移転先の買い上げ価格を提示▽土地の買い上げ-という流れで作業を進めていた。しかし複数の移転対象者が同じ移住先を重複して希望し、住民間で話し合うケースが出てきた。町によると、住民同士の関係性を不安視する声が上がったとされる。また、希望する土地を町が早期に買い上げず、移転先を逃す懸念を示す住民もいたという。 新たに町は来年度以降、補償調査の済んだ住民の中から順次、年度ごとの移転対象者を具体的に絞ることを提案した。絞り込む条件は、住民同士の話し合いで決める。移転対象者を早期に絞ることで、希望する移転先の重複を減らす狙いがある。また、希望対象となった移転先で、町が地主に買い上げ価格を素早く提示し「交渉を加速できる」(町担当者)とした。 町は既に調査の済んだ21戸と併せ、本年度中に計41戸で補償調査を終える見通しを伝えた。この日、参加した住民は町の示す見直し案に同意した。 同町磯浜町のパート、田山民江さん(59)は「体が動くうちに移転したい。移転先の土地探しが一番のネックなので(地主と)うまくマッチングが進めばありがたい」と話した。
茨城新聞社