【パキスタン代表監督奮闘記6】初のWBC出場という新たなステージへ
私は結局、盗塁のサインを出すことなく、パキスタン代表は後続が倒れ0-5で敗退した。結果論ではあるが、最後で最大の山場を逃した原因は、守りに入った監督である私の責任。この場面で、判断力が鈍った私は、相手に失礼な采配はできないと、なんの根拠もなく守りに入っていた。
底知れぬ可能性を持つパキスタン野球
この試合、選手は本当にすごかった。苦しい場面で決めた牽制死、ダブルプレー。何度も苦しい場面を、練習で鍛えてきた守備で乗り越え、流れを自ら引っ張り続けた。それが、最後の最後に、私はみんなの努力を台無しにする大きなミスを犯した。もし私が盗塁のサインを出していても、うまくいった保証はない。しかし、競技スポーツにおける結果は全てを語る。 この事実は、プレーしていた当のパキスタン選手も、観戦していたお客さんも気付いていなかったかもしれない。マクラーレン監督と私の暗黙のやりとりで終わっていたかもしれない。パキスタン野球連盟も、WBC出場を決めたことで、すでに大会を終えたかのようなお祝いムードだったこともある。 それから2週間、信じられないほどに私は活力が湧かなかった。結果を残せなければ、ただの人。改めて痛感する一戦となった。一方で、アジア選手権という大舞台にて、習得したスキルを堂々と披露する選手の姿からは、底知れぬ可能性を感じた。私が落ち込んでいる2週間、半分以上の選手が「練習再開」のメッセージをくれた。歩みを止めることを知らないパキスタン野球、2016年、念願のWBCへと挑戦する。新たなステージ、アメリカ・ニューヨークで、パキスタングリーンがどんな輝きを見せるのか、目が離せない。 =おわり
*アジア選手権 アジア野球連盟主催で2年に1回行われる、アジア最高峰の野球大会。アジア4強と、東アジアと西アジアの各予選優勝国が参加資格を手にし、合計6カ国で頂点を争う。今年は9月16~20日に台湾で開催され、日本、台湾、韓国、中国、インドネシア、パキスタンが出場した。