「どの程度の下駄か、誰もわからないでしょう?」 キヤノン初の女性取締役・前消費者庁長官の伊藤明子さんが本音で語る女性活躍
今の時代にフィットした生き方や働き方の先にある女性リーダー像って? そんなテーマを掲げてAERAdot.編集長の鎌田倫子が女性リーダーにインタビューする連載。1回目は前消費者庁長官の伊藤明子さんにご登場いただいた。 ◇ 伊藤さんは今年、キヤノン初の女性取締役に就任したことでも注目された。1985年の男女雇用機会均等法より前に建設省(当時)に入省し、80人ほどいた同期の中で女性は一人だけだったという。伊藤さんのキャリアを振り返るとき、「女性初」という言葉が常についてまわった。伊藤さん自身は、それをどのように感じてきたのだろうか。まずは社会の「女性登用」「女性活躍推進」についての本音をきいていきたい。 【写真】本音? 発言にドキリとさせられたインタビューの様子 ――キヤノンには女性取締役がおらず、伊藤さんの起用を「おじさん企業に女性役員」と紹介した経済記事もあったほどです。昨年の株主総会では、女性の取締役がいないことに対して米国の議決権行使助言会社が反対を推奨し、取締役選任の賛成率が低下しました。こうした経緯があって、女性初の取締役の打診をどのように受け止めましたか。 伊藤明子さん(伊藤):実は最近、その手の質問を女性からよく受けます。 でも、「初めての女性」についてどう思われますかと聞かれても、女性を代表しているわけではないので答えにくいですよね。 ある勉強会では、「女性だからという理由で選ばれるなら断った方がよいのでは」とまで言われましたよ(笑)。 ――女性だから選ばれたと指摘されているようなもの。あなたは、それには怒るべきだと。 伊藤:そうですね。まず、打診してくださった方は「女性だからあなたに頼みました」とはおっしゃっていませんけど。ただ怒るべきと言われたとき、瞬時に二つ答えました。 一つ目の答えは、入り口はどうであれ、結果「この人に頼んで良かった」と思われればいいんじゃないですか、と。 女性だからというのではなく、私自身が心掛けているのは、入り口で「これは私の仕事ではない」とできるだけシャットダウンしないこと。直接関係ないことがあとで役に立ったりするので。情報を得たり、体験したりすることを躊躇しないほうがいいかなあ、と思っています。 二つ目は、女性という取っ掛かりや枠もなく、「伊藤明子がいい」と言ってもらえるほどの実力があるとは思っていない、という答えです。個人的にはそれは大変残念ですけれども、そこまで能力が図抜けているとは自分自身は思っていない。女性だから機会を得たのだと思う。