少子化対策の財源確保で『国民負担は生じない』との説明は本当か?
「支援金」の国民一人当たりの平均負担額は2028年度に月額450円
こども家庭庁は3月29日に、少子化対策の財源として医療保険料に上乗せして徴収する「支援金」について、加入者の負担額の試算値を公表した。加入する医療保険制度ごとに負担額に大きな差が生じることから、今後、不公平との批判が高まる可能性があるだろう。 政府は少子化対策に、2026年度までに年間3.6兆円の支出を行う。その財源は、歳出改革で1.1兆円、規定予算の活用で1.5兆円、そして支援金で1兆円としている。支援金の徴収は2026年4月から始める。2026年度には約6,000億円を徴収し、2028年度までにそれを1兆円にまで拡大する。 2028年度の国民一人当たりの月間平均負担額の推計値は450円となる。当初、政府は荒い試算として500円程度との数字を示していた。
公的医療保険について、令和4年3月末時点での被保険者数、つまり被扶養者ではなく保険料を負担する加入者本人の数は、(1)市町村国保が2,537 万人、(2)協力けんぽが2,507万人、(3)組合健保が1,641万人、(4)共済組合が477万人、(5)後期高齢者医療制度が1,843万人である。合計で9,005万人となる(図表)。 この9,005万人が、支援金の総額1兆円を平等に負担する場合には、その金額は一人当たり1万1,105円、月額925円となる。政府が示した数字がこれよりもかなり小さいのは、医療保険には雇用者(企業)負担分があるためだ。協会けんぽと組合健保、共済組合は、保険料の負担を労使折半しているため、支援金のために医療保険に上乗せする場合、個人の負担はその分小さくなる。 被保険者の家族を含む加入者一人当たりの負担額を医療保険制度ごとに計算すると、公務員が加入する共済組合は600円、大企業が多い健保組合は500円、中小企業が多い協会けんぽは450円となる(いずれも労使折半後)。自営業者らの国民健康保険は400円、後期高齢者医療保険は350円である。 実際には、支援金は、サラリーマンら被保険者の給料から天引きされる。被保険者一人当たりの平均負担額(2028年度)は、共済組合で900円、健康組合で850円、協会けんぽで700円となる。所得水準の高い人の月間負担額は1,000円を超えることになる。