「よくなったと感じるのは…」打撃投手にブルペン捕手、カープの裏方が明かすリアルな選手評…秋季キャンプの成長株とは
明確になった個々のテーマ
ベテランだけでなく新米の裏方も今秋キャンプを支えている。通算290試合に登板し、23年限りで現役を引退した一岡竜司は、アナリストとして同行。投球の軌道や回転数が計測できる「Rapsodo(ラプソード)」やバットの軌道やスイングスピード、角度などが測れる「ブラストモーション」を用いながら選手の技術向上の手助けをしている。 「この秋は投手みんなただ投げるだけでなく、各自がそれぞれ取り組んでいることをやろうしている姿が見えます。斉藤(優汰)だったら、黒田(博樹球団アドバイザー)さんや永川(勝浩投手コーチ)さんにフォークを教えてもらっている。球種がひとつでも増えれば大きいと思う。大道(温貴)もほぼ真っスラのようなカットボールを覚えてくれて、益田(武尚)も右打者の内角ツーシームをブルペンで積極的に投げている。練習を見ていても、それぞれが自分のやるべきことが分かっているなと感じます」 キャンプ前に選手個々にレポートを提出させたことで、自身のテーマが明確化された。練習の成果として球数や練習時間など量を表す数字の情報が先行するなか、量だけでなく質も向上している。また、今キャンプでは、球速ばかり追い求めなくなった直球に対する意識にも変化を感じている。 「みんながみんな、きれいな真っすぐを投げようとはしていない。(球の回転が)ぐちゃぐちゃはぐちゃぐちゃでもいい。それぞれが自分の真っすぐの特徴を分かってくれている」 実際に投手の球を受ける長田勝ブルペン捕手は、玉村昇悟の真っすぐの変化に成長の跡を感じている。 「タマはマツダスタジアムでの秋季練習から、課題練習として引っかけたような真っすぐじゃなく、伸びのある真っすぐを投げることを意識して取り組んでいました。キャンプ終盤に受けたら、そういう球を安定して投げられていたので、自分のものにできているのかなと感じた」
投手に必要な武器
長田は02年ドラフト6巡目でオリックスに入団も、一軍出場がないまま07年に戦力外通告を受けた。それでもキャッチング能力を認められ、08年から広島でブルペン捕手となった。10年、福岡で行われたプロ野球オールスターゲームに広島から合流したときには、阪神・藤川球児(現監督)のスピンの効いた伸びのある真っすぐに衝撃を受けた。23年WBCの宮崎合宿をサポートしたときには、ダルビッシュ有(パドレス)や山本由伸(ドジャース)、佐々木朗希(ロッテ)ら錚々たる投手の球を受けてきた。 「やっぱり、日本を代表する投手は何かひとつ特徴がある。真っすぐだけじゃない。オリックスの宮城(大弥)のスライダーは、真っすぐのように来て、最後にぐんと曲がる。今のカープの左投手にあの曲がりのスライダーを投げられる投手はいない」 投手の高速化が進む中で、投球の軸となる真っすぐを磨くことは言うまでもなく、さらに自身の代名詞となる武器を習得することが若い投手に求められる。裏方の話を聞く限り、それは順調に進んでいるように感じられた。 この秋の成果が必ずしも来季の結果につながるわけではない。だが、新たな戦力の萌芽は確かに感じられる。来季、裏方の労苦に報いる活躍を見せるのはどの選手だろうか。
(「炎の一筆入魂」前原淳 = 文)
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