どうする〝農家の婚活〟 出会い+農業理解促す「仕掛け」とは
誰もが結婚する時代ではなくなった。未婚率は年々高まっている。一方で、若手農家と話すと話題になるのが、結婚や出会いの場がないという悩みだ。都会に住む人と農家をマッチングする婚活イベントも盛んだ。取材すると、出会いの場に加え、地元農業の理解も進める“仕掛け”が見えてきた。 【グラフ】各年代の男性未婚率の比較
「共同作業」がカギ
白桃の収穫体験や地元産ブドウを使ったパフェ作り──。岡山市や倉敷市などの生産者でつくる新農業経営者クラブ連絡協議会が主催する婚活イベントの特徴だ。 婚活イベントは、特に女性の参加者集めに苦慮する。協議会が「共同作業」をキーワードに、会話や食事だけの婚活イベントと差別化し、呼び込みも工夫したところ、県内外から多くの女性参加者が集まるようになった。 8月に行った婚活イベントには、23人の女性が参加。昨年から約10人も増え、大阪や兵庫など都市部からも参加があった。昔のお見合いのように座って話すだけでなく、パフェ作りでは見栄えや時間などを競うなどの魅力的な内容が参加を後押し。県の交流サイト(SNS)を使った告知や、JAや行政の窓口の他、スーパーや飲食店など生産者の取引先に合計1000部のちらしを配ったことなども奏功したという。 イベントの合間には先輩農家の夫妻にインタビューする機会を設け、結婚後の生活を想像できるよう工夫した。 イベントは盛り上がり、9組のカップルが成立。4割の成立は平均に比べて高く、参加者の満足度は高かった。参加した30代女性は「普段出会うことがない農家の魅力と苦労を知ることができた」と話したという。 「女性の参加者を集めることだけでなく、男女の交流を促す工夫が重要だ」と話すのは、JA香川県青壮年部の藤澤明委員長だ。同部は2015年度から生産者とJAが主体となって担い手の婚活支援に取り組む。 19年度までは、菓子店と協力した「ロールケーキ」作りなど、女性の関心を引く婚活イベントを企画していた。しかし、料理教室では女性だけ、男性だけで集まりがちで、男女の交流が少ない傾向があった。昨年度から、食事を通じて青壮年部員と地元農業をより深く理解できるプログラムに変更したところ、女性の参加者からも部員からも好評だった。参加者は県内のイベント会社に依頼して農業に関心がある女性を募集した。 料理には、ネギやブロッコリーなど参加者が栽培した農産物を使用する。参加した青壮年部員が自身の農産物を1人当たり5~15分でプレゼンテーションする時間もつくり、自己紹介を含めて詳しく知ってもらう流れにした。 藤澤委員長は「内気な部員も自慢の農産物を通じて、自信を持って自己紹介ができる」と利点を説明する。