“接戦での雪辱”が超伝統校を変えた！ 星稜が悲願の優勝を目指して「大変革中」
「まずは一から」
例年、星稜は冬に筋力、体力強化を行い、基礎を固める。春や夏の大会前になってくると、より実践的な練習や指導を行う。毎年同じメニューをこなすことが普通であり、あまり工夫を凝らすチームではなかった。しかし、今年の星稜はこの結果を踏まえ、一味違うものとなっていた。 「あの試合を経て、普段の練習からもう一回見直そうというきっかけになった。キャッチボール一つにとっても、スローイング一つにとっても、胸元なのか、膝元なのか、あるいはワンバウンドなのか」（山下監督） 過去と比較して、ここまで基本に忠実な練習を行っているのは異例である。キャッチボールやスローイングはできて当たり前が普通だったからこそ、当たり前の先にある技術力を追い求めるあまり、その基本が疎かになっていたのではないかと、山下監督はまずは練習内容から疑問を投げかけた。 また、山下監督は練習の見直しについてほかにも取り組み始めている。 「ノックで普段ならサード、ショート、セカンドと順番に打っていくが、ランダムに打ってみたり、ケースを想定してノックを打ち、ランナーを実際につけてみるなど、ノックのバリエーションを増やした。ランナーも走塁の意識を高く持って、一つの進塁をワンプレーで狙い続ける意識を持たせている」 基礎や基本を重んじる意識に加え、練習内容に変化をもたせるなど、山下監督は様々な変革を起こす中で、接戦をものにするために良いプレーを起こすこと以上に、初歩的なミスプレーをなくしていけるよう、全てを一から見直しているようだった。 また、筆者は3年間星稜高校野球部に所属し、活動してきたが、星稜は主に練習内容の多くを打撃とし、守備の練習はノックだけがほとんどであった。練習内容や意識改革を通しての変革を聞く中で、守備と走塁への改革が多く、打撃よりも守備を重点とした切り替えを行っているように感じた。 その点について、山下監督はこう答えた。 「このチーム発足時から、前年のチームと比較して長打や広角に打てる子が少なかった。バットも変わっており、一点が取りづらいという中で、まずは守って、打てなくてもなんとか一点を取れるようにする。一概に切り替えたというわけではない」 金属バットの変更により、打高投低から打低投高の時代に変わりつつある今、打てなくとも勝てるよう、打撃から守備へ変化しているのではなく、打撃のための守備へと、今までにはない星稜が生まれようとしていた。
「チームワークで戦う夏」
夏の石川大会は7月11日から開幕され、星稜は悲願の初優勝を目指し、変革を続け調整を図っている。現在のチームの強みについて山下監督は、こう述べる。 「心身ともに練習を追い込み、練習試合に勝てないこともあったのですが、そこからの学びを通して、チームは向上している。選手同士で意見をぶつけている場面もよく見かけているので、チームワークが強みで、みんなで戦う夏に」 選手間でのミーティングを通じてよりチームの士気は高まってきている。基礎を固め、より強固となった星稜が深紅の優勝旗を手にすることができるか、この夏の新たな姿に注目したい。 （取材・文/供田昂大）
