南海トラフ地震 愛知県の死者想定2.9万人-「減災」なら4割以下に
愛知県は30日、南海トラフで起こりうる最大規模の地震によって、県内で約2万9,000人が死亡、建物約24万棟が全壊するなどの被害想定を発表しました。同時に、建物の耐震化や津波避難ビルの有効活用などの「減災」対策が進めば、死者は4割以下の約1万1,000人、全壊建物も約4割の10万棟余りにまで抑えられるとして、一層の対策を呼び掛けています。 【動画で解説】南海トラフ巨大地震ってどんな地震?
■堤防沈下で浸水面積拡大、死者数も国の倍に 県防災会議で示された被害想定は、国が2012年に公表した南海トラフの最大想定モデルを反映。マグニチュード(M)9クラスの巨大地震で、愛知県沿岸部を中心に最大32市町村が震度7の揺れに見舞われ、渥美半島の外海に面する田原市で最大21メートルの津波が発生すると想定します。 津波によって深さ1センチ以上が浸水する面積は、名古屋市の最大7,647ヘクタールをはじめ、西尾市で5,184ヘクタール、豊橋市で4,540ヘクタールなど。県全体では最大約3万7,000ヘクタールと、国想定の3.7倍以上に広がりました。これにともない、浸水や津波による死者も国想定の2倍を超える1万3,000人という厳しい数字がはじき出されています。 これは防波堤やコンクリート構造物が地震ですべて倒壊または沈下して越流、盛り土の堤防はすべて4分に1の高さにまで沈み込むなどと想定したからです。愛知県では1959年の伊勢湾台風によって西部の木曽川沿いを中心に大規模な浸水被害が出ており、「いったん水に浸かるとなかなか引かない」地形であることが影響しています。 ■カギは都市部での減災対策促進 今回の最大想定モデルは「千年に一度あるかないか」の規模で、経済被害などは推定されていません。県は、より発生頻度の高い東海、東南海、南海地震の連動クラスの地震を「過去地震最大モデル」として、実際の防災対策の軸とします。後者のケースで、経済被害は約14兆円、地震発生直後に約375万軒が停電し、電力の復旧には1週間程度がかかる、などのライフライン被害も想定。がれきなどの災害廃棄物は、東日本大震災で東北3県から発生した量に匹敵する2000万トンが発生すると見込んでいます。