「星野リゾート 青森屋」に泊まって青森ねぶた祭に心昂ぶる
東北三大祭りの一つとして知られ、国指定重要無形民俗文化財の「青森ねぶた祭」。令和6年度は8月2日(金)から7日(水)まで行われ、連日天気にも恵まれ大盛況となった。 【関連画像】「星野リゾート 青森屋」に泊まって青森ねぶた祭に心昂ぶる 一度はその迫力ある祭りを眼前で観てみたいと思いつつも、宿泊先や観覧場所の確保などを考えると今までなかなか実行に移せなかったのだが、今回、「星野リゾート 青森屋」が主催する『青森ねぶた祭観覧バスツアー』付き宿泊プランを見つけ、迷うことなくさっそく予約! 祭り会場までのバス送迎と観覧席、夕食の弁当などが用意されており至れり尽くせり。人混みにもまれて大事なねぶたを見逃してしまうなんて心配もない。もちろん、青森屋での滞在時間も実際のねぶた祭りに負けない熱量と楽しさに溢れている。つまり両方を体験することは、まさに高揚感と非日常を満喫することでもあるのだということ実感した。 豪華絢爛なねぶたがいざ出陣! 跳人や囃子方らの名脇役も華を添え祭りは最高潮。 観覧バスツアーは16時に青森屋を出発。専用のバスに乗り込み、1時間半ほどで青森市内のまつり会場に到着した。バスを降りると弁当と観覧席券が配られ、観覧時間の19時まで自由に過ごす。 そして夜の帳が茜色から紫色へと色味を深めてきた頃、ドーンという太鼓の合図とともに祭りがスタートした。 今回、青森屋がキープしてくれた席は青森市役所のそばに陣取られており、2カ所の大型ねぶた出発点の一つのすぐ近く。さっそく太鼓や笛の囃子方のリズムとともに「ラッセーラ ラッセーラ」の掛け声が響き渡り、最初のねぶたが夕闇に極彩色の光を放って近づいてきた。 道の両側の歓声に応えるように方向転換しながら次々に勇壮華麗な姿を魅せる立体造形が特徴の青森ねぶた。眼の前にぐぐっと迫ってくると、想像以上の迫力に息を呑んだ。まさに圧巻! あぁやっぱり凄い! 国道・八甲通り交差点から国道・平和公園通り交差点の1.2キロをぐるりと運行していくねぶたの数は全22台。その前後に前ねぶたや子供ねぶたなどが練り歩き、囃子方や扇子持、そして囃子に合わせて踊り跳ねる跳人(ハネト)が活気をつける。 踊りというより飛び跳ねる躍動感たっぷりの動きはファンキーでエネルギッシュ! ちなみに「ラッセーラ」の掛け声の意味は”出せ出せ”とねだる言葉の変形だという。 また「ねぶた」は、方言の”ねむり流し”の眠りが”ねぶた”に転訛したものとされている。跳人の衣装を着れば(レンタルあり)誰でも参加できるということを聞き、次回はぜひ踊る方に参加したいと思った。 青森ねぶたの始まりは享保年間(1716~1736年)にその記録が遺り、町内単位で作られていたものが今につながっているとされる。年々大型化され、現在は1台あたり制作や運行費用などを含めて2000万円程かかるとのだいう。 ねぶた制作は専門の”ねぶた師”が手がけ、第六代名人・北村隆氏や第七代名人・竹浪比呂央氏をはじめ、令和6年は17名のねぶた師が腕を競い合った。 制作プロセスは歴史的な物語や伝説などを題材に構想を練って下絵を描き、骨組みや電気配線を行った後に紙張り、書き割り、ロウ書き、色付けをして本体が完成する。祭りが終わるとすぐに翌年用の制作準備にとりかかるというからまさに1年がかりの作業だ。長い時間と想いを込めて仕上げたまさに芸術作品! 毎年、祭り期間中に作品賞が発表されるが、令和6年は、北村隆氏の弟子の北村麻子氏の作品が「ねぶた大賞」を受賞した。題名は『鬼子母神』。お釈迦様と鬼子母神の対峙が迫力満点に表現され、女性ねぶた師らしい慈愛に満ちた出来栄えに思わず魅了された。 青森のぬぐだまる文化を”のれそれ(目一杯)”体験できる温泉宿。 「星野リゾート 青森屋」の敷地内に一歩足を踏み入れると、そこかしこに懐かしさを誘う青森の原風景が漂っている。緑豊かな22万坪の敷地にのんびりと馬車が闊歩し、館内随所には青森のお祭りの熱気や雪国の暮らしが紡いできた伝統工芸、季節の移ろいなどが色鮮やかに演出されている。 割烹着姿のかっちゃ(お母さん)がもてなす郷土の味に舌鼓を打つのも楽しみだし、池に浮かぶ露天風呂や青森ひばの浴場でつるつるっと滑らかな手触りの温泉に浸るのも大きな魅力だ。青森の”ぬぐだまる(あったかい)”もてなしと文化を”のれそれ(目一杯)”を合言葉にたっぷりと堪能したい。 ■オリジナルのショーで青森の四季と祭りの世界観を表現した「みちのく祭りや」 2022年4月1日にリニューアルオープンした「みちのく祭りや」。文字通り、みちのく青森の代表的な4つの祭りと季節の移ろいの情景を物語のような構成でショーアップ。 映像と照明を駆使した仕掛けで青森の厳しい冬、華やぐ春、そして待ちに待った祭りのシーズンの夏へとショーは進んでいき、本物のねぶたの登場で舞台はクライマックスを迎える。実際の祭りに参加できなくても、青森屋のこの舞台を観るだけでもその場にいるような熱気と臨場感が味わえるだろう。 毎晩9時から青森屋オリジナルの「青森四大祭りのショー」が披露され、新たなアクティビティとして人気を呼んでいる。 入口からステージへと向かうアプローチにも、ねぶた師の立田龍宝氏がデザインした木製ねぶたの切り絵が施され、早くも期待感が高まる演出に。座席は指定制でゆっくりと観ることができる。ショーで表現するのは、移ろう季節の美しい風景と、厳しい冬から溜め込んだ祭りへの熱い想いだという。 語り手の進行で舞台は津軽三味線の生演奏や生歌なども交え、変化する季節の映像がドラマチックに展開。そして祭ばやしとともにスクリーンに映るシルエットが解かれると4つの祭りの本物の山車が次々に登場するという凝った仕掛けだ。 「おおっ!」と歓声が上がり、会場の空気は最高潮に! 客席にも声がかかり、舞台で一緒に跳人気分を楽しんだ人も多くいた。 青森四大祭りとは「青森ねぶた祭」「五所川原立佞武多」「弘前ねぷたまつり」「八戸三社大祭」。それぞれのシーンごとに演出や仕掛けが異なり、一気に4つの祭りを体験している気分に。 思えばこれはとても贅沢なことだろう。中央に座している迫力満点の大型ねぶたは、今夏ねぶた大賞を受賞した北村麻子氏制作の『神武東征』。2019年の祭りで実際に運行し、知事賞を獲得した作品だ。 ほかにも第七代名人の竹浪比呂央氏や内山龍星氏、北村春一氏など6名のねぶた師の作品が一堂に会し、舞台を盛り上げている。 ■みちのくの楽しい遊びに興じ、心和むぬくもりに包まれる青森屋での滞在。 青森屋で過ごすひとときは心の和みと懐かさに満ち、どの場所にいても思わず笑顔がこぼれる。季節の風物詩も多彩でいつ訪れても新たな出会いや発見があり、楽しみが付きない。 夏は「しがっこ金魚まつり」、秋は「じゃわめぐりんご祭り」などがじゃわめぐ広場を演出し、また、かっちゃ(お母さん)が振る舞う郷土料理を味わったり、青森の地酒を揃えた酒場でお猪口を傾けるなど、ファミリーやカップルなどさまざまな客層が満足する宿といえるだろう。 いずれも青森の文化を目一杯(のれそれ)堪能できるとっておき。やっぱり青森屋では連泊してゆっくり滞在するのがお勧めだ。 星野リゾートのなかでもエンターテイメント性とテーマパークのような楽しさは特筆したくなるほど。青森屋には老若男女だれもが満足するバラエティーに富んだ仕掛けが用意されている。 広大な敷地には本館と東館、西館があり、本館にあるフロントから1階下のじゃわめぐ広場が宿のメイン会場。チェックインを済ませてここに降りてくると空気が一気に変わり、お祭りのような高揚感に包まれる。 訪れたときはちょうど夏のイベントの「しがっこ金魚まつり」の金魚ねぶたで空間が埋め尽くされていた。金魚ねぶた350個に囲まれる金魚ねぶた灯篭回廊や巨大金魚ねぶたの迫力はまさに圧巻。金魚ねぶたりんご飴やかき氷などもあり、縁日のような楽しさは子供の頃に戻ったようなわくわく感を思い起こさせてくれた。 金魚ねぶたは昔、津軽藩で藩士のみが飼うことができた津軽錦という金魚に庶民が憧れてねぶたを作ったのが由来とされている。季節のイベントは、春は桜並木を歩いている気分になる「たんげ花咲かまつり」、秋は「じゃわめぐりんご祭り」、冬は「わっど開運まつり」に。 ちなみに”しがっこ”とは”氷”、”たんげ”は”たくさん”、”わっど”は”思いっきり”という青森の方言だそうだ。 青森屋では大人の楽しみとして夏限定のイベント「にんにくビアテラス931」や、池畔に佇む「八幡馬ラウンジ」で静かに寛げるプログラムもあり、特に賑わいを離れてゆっくりしたい向きには後者はうってつけ。 八幡馬は良馬の産地として知られる南部地方の伝統工芸品で、その意匠をもとに空間がおしゃれにデザインされている。テラスからは池や自然風景が一望でき、刻一刻と変化していく夕方の景色とともにシードルや抹茶などをいただきながら穏やかな時を過ごすことができた。 ■池に浮かぶ露天風呂や青森ひばの浴場、そしてねぶたを感じるサウナで温泉三昧 まるでふわりと池に浮かんでいるような気分になる開放的な露天風呂や、香り豊かな青森ひばの内湯。とろみのある手触りの温泉がたっぷりと満たされ、朝夕に温泉に身を委ねれば、心から清々しさに包まれる。 今年4月には祭りをテーマとして「青森ねぶたサウナ」が新設され、さらに心身が”ととのう”こと必至。ここにも青森文化が生かされており、ねぶたの面白さ素晴らしさを新たなスタイルで楽しむことができる。 まさに夢心地になれる温泉。青森屋を特徴づけているものの一つとしてやはり温泉の存在は大きな魅力だ。まずは壁、天井、浴槽すべてに青森ひばを使った内湯に木の香の清々しさを覚え、内湯で体を温めたところでそのまま露天風呂に移動する。 と、池に張り出した丸い浴槽が目に飛び込んできてさらなる感動と驚きに包まれた。透明な湯に体を滑り込ませると、目線の先の池と湯船との一体感が不思議な浮遊感をもたらしてくれる。お湯はとろりと滑らかで体にまとわつくよう。美肌の湯ともいわれる所以で、特に女性客に人気なのもうなずける。 冬は絶景雪見風呂「ねぶり流し灯篭」が登場。ねぶたの山車や願い事を書いた灯篭を池に浮かべるのだそうだが、想像するだけでも幻想的な趣を味わうことができそうだ。 また、今年の4月には新たなサウナが併設されたが、そのネーミングが何と「青森ねぶたサウナ」! ねぶた祭りの雰囲気をサウナでも体感できるという画期的かつユニークなコンセプトサウナで、内部には「竹浪比呂央ねぶた研究所」が手掛けたねぶたを設置している。 サウナは本場フィンランドの「HARVIA」のサウナヒーターを導入。サウナ内に祭り囃子が流れると、その盛り上がりに合わせてオートロウリュで熱気が漂うといった仕掛けも面白い。ねぶた祭りの熱気とサウナの熱気をかけ合わせ、ここでも青森をまるごと体感できるといった趣向。 また、サウナマットやサウナストーン、サウナハットもねぶた祭りから着想をえたオリジナルだ。 青森屋主催の「青森ねぶた祭観覧バスツアー」を楽しんだ後に、さらにねぶた祭りの余韻を楽しむには最高のシチュエーション。次回もこの組み合わせで再度青森屋に予約を入れることにしよう。いや、四季折々、何度訪れても楽しみは尽きないだろう。 青森県三沢市字古間木山56 TEL:050-3134-8094(星野リゾート 予約センター) チェックイン・アウト:15:00・12:00 客室数:236 料金:2万3000円~(1泊あたり1室2名使用の1名分、 夕朝食付、税・サービス料込) アクセス:三沢駅からホテルまで徒歩15分。三沢駅・三沢空港からは無料送迎バス有り。 公式HP: 文/岩谷雪美 撮影/新井寿彦