物価研究の第一人者・渡辺 努氏に聞く「賃金と物価の好循環」の現状と今後は?【Bizスクエア】
――2%を達成すれば利上げがあり、確度が高まらない限りは上げないという話だったのが、最近は「緩和の度合いを調整」など、論理展開が変わってきている。 東京大学大学院経済学研究科教授 渡辺 努氏: 日銀の文章を見ててもそうなんだろうと思う。いいかどうかは置いて、変化していると思う。彼らの見通し通りに「物事が進んでいけば利上げをしていく」という言い方が、3月ぐらいから始まって、利上げした。それから7月もオントラック(軌道に乗っている)だったので利上げをした。このロジックは2023年にはなかった。新しいルールというか、日銀の将来の政策に関する決め方を明らかにすることによって、できるだけ不確実性を減らしていこうという試みの一つだと思う。 ――今までは途中だったら、変えないで目的達成まで行くという話が、オントラックであれば利上げするという話に変わったということか。2%の目標をもうちょっと厳格に考えた方が本当はよいのか。 東京大学大学院経済学研究科教授 渡辺 努氏: 日銀は「インフレターゲティング(物価上昇率に数値目標を掲げ、その達成を優先させる)」という仕組みをとっている。ターゲットは2%で、金利の上げ下げは当然のことながら2%よりも上か下かということで決めるべきだと思うので、オントラックの話は、そこから逸脱してると思う。 ――日銀の物価予想が「2%」に向かっている。オントラックだといってよいのか。 東京大学大学院経済学研究科教授 渡辺 努氏: インフレ率は、2023年夏がピークだったが、その後落ちてきている。(利上げした)3月、7月はまさに落ちていく中で利上げが行われたが、そのときの根拠は、4月に出された「展望レポート」。それが日銀の予測だった。それと「消費者物価指数」の線が重なっている。これを持って「オントラック」だということで利上げをしたと。オントラックでも、オフトラックでも「インフレ率が下がる局面で、予想通り下がったから」とも聞こえる。