金田を流出させた阪神の人的補償リストは正解だったのか
オリックス、阪神の両球団は、FAで阪神へ移籍した糸井嘉男外野手(35)の人的補償としてオリックスに金田和之投手(26)が指名され移籍することを発表した。 人的補償はFA戦略からは避けられないリスクだが、金田を指名されたことを惜しむ声が少なくない。2012年のドラフト5位で阪神に入団、4年目のシーズンを終えた右腕。2014年には開幕から中継ぎとして使われ、8月後半からは先発ローテーションに入り5勝1敗の数字を残した。今季は1軍では6試合しか中継ぎ登板がなかったが、第5、第6の先発候補としての期待値が高く、ファームでは後半戦で将来を見据え先発起用されていた。150キロ級のストレートに加え、カウント球、勝負球に仕える変化球もあり、「2イニングなら不安なく任せられる」という評価もあった。 オリックス側はファームで対戦してきた田口2軍監督の意見や編成部の調査を元に金田を指名したようだが「良く見ていた」というしかない。中継ぎとしての即戦力だけでなく、まだ26歳。先発としてブレイクする可能性も秘めている。 FAの人的補償については水面下での下交渉があって駆け引きが行われるケースもある(ルールでは禁じされている)。だが、今回の経緯を見る限り、そういう下交渉はなく、阪神の28人プロテクト外のリスト提出を待っての一発勝負だったと考えられる。水面下交渉ができなかったのであれば、もっと戦略を練るべきではなかったのか、という意見が、早くも阪神のチームの内外から聞かれている。 阪神は今季ブルペン陣が手薄で勝利の方程式を作れなかっただけにオリックスで金田が結果を残せば、なおさら“何をしていた”というフロント批判が出てくるだろう。 阪神は過去にもFAの人的補償では手痛い目にあっている。新井貴浩のFAの人的補償で広島に4年目の外野手、赤松真人を指名され、その赤松は、翌年から3年連続100試合出場するほど戦力として活躍、3年目には打率.285を打ち、今なお守備走塁のスペシャリストとして評価されている。 当時の阪神の外野陣は、金本、赤星、新外国人のフォードの3人で固まっていて、林や葛城がバックアップメンバーとしていたため、阪神では出番がなかったことは事実だが、結果論で言えば広島に先見があった。 また小林宏の人的補償でロッテにドラ1の高濱卓也を持っていかれた。横浜高から入団してまだ4年目を終えたばかりの若手。高濱も移籍してすぐに阪神との交流戦で活躍してファンを悔しがらせた。その後は、1軍定着したとはいえなかったが、今季も開幕スタメンに抜擢されるなど徐々に出場試合数は増えている。内外野ができるユーティリティプレーヤーの高濱も今チームにいれば使い勝手は良かったのかもしれない。 金田の流出は阻止できなかったのか。