KINTOのちょっと変わった楽しみ方は果たして成功したのか? GR86を友人とシェアして過ごした2年間を振り返る!
1年10ヶ月と2万83kmを過ごした結果はどうだったのか?
KINTOで契約したGR86を趣味車として友人とシェアする。そんな新しいクルマの持ち方を実践してきた編集部の若手、ムラヤマの自腹リポート最終回。 【写真20枚】Z世代の若者ふたりでシェアしながら乗ったKINTOのGR86の写真はこちら 2022年6月にやってきたGR86で過ごす日々はあっという間だった。今年3月末、1年10ヶ月と2万83kmを過ごしたところで解約することになったのである。 ここで、KINTOユーザーとして過ごした1年10ヶ月の総まとめをリポートする。 ◆クルマを2人でシェアリングする 私のKINTO生活は、大学で出会った一番の親友、Nくんからのひょんな提案がきっかけで始まった。大学生活の終わりが迫った2022年1月のことだった。 「KINTOのGR86、一緒に乗ってみない?」 この提案のポイントは、月々の利用料金を折半してクルマをシェアリングすることにあった。 任意保険料や税金、メンテナンス費用も含んだサブスク料金は5万3240円(当時)。これを折半して、お互いにひと月2万6620円の持ち出しで自由に乗れるようにしようというのだ。 新しいことは何でもやってみたい私は、二つ返事でこの話に乗った。すぐに申し込んだけれど、納車までは5ヶ月も待った。 ひとつ問題になったのは保管場所だ。私とNくんの住まいは電車を使うと1時間弱、首都高を使えば車で約40分離れている。決して近くとは言えないから、融通し合うのが難しい。結局、なし崩し的に私が自宅近くに借りた月極駐車場に保管する運用を始めたが、これがいつのまにか定着した。 Nくんが乗るときには私の自宅まで取りに来ることもあったし、私に時間があれば、ドライブを兼ねてNくんの家に届けることも、はたまた、その間にある編集部で受け渡ししたことも一度や二度ではない。 意外にもこの方法は上手くいった。互いの家は都心部を挟むように位置しているから、Nくんにとっては混雑した都心部をクルマで抜けるよりも、私の家に駐めるほうが楽なことも多かったのだ。それに、私が編集部まで乗っていくのは、もちろん何の苦労もなかったからである。 とはいえ、普段、手元にクルマがある私の方が乗る機会は多い。保管場所の駐車場代の負担割合に差をつけることで対応した。 ◆計画的なプラン選び KINTOのGR86を解約することにした理由は、お互いの生活環境の変化に尽きる。とりわけNくんが大学院(修士)を修了し、就職に伴い東京から離れるためだ。実は、これはNくんの提案当初から相談していたことで、はじめからこの3月で解約する予定だった。そこで重要だったのがプラン選びである。 KINTOの新車サブスク「KINTO ONE」には、解約金フリープランと、初期費用フリープランが用意され、月々の料金が異なる。また、前者は契約時に申込金として6ヶ月分相当の料金を別に支払うことで、いつでも追加費用無く解約できる。一方の後者は、契約時の費用こそ無いものの、契約期間は3/5/7年からの選択制で、やむを得ず途中で返却する時には違約金が掛かるのだ。 そこで、契約前にはそれぞれのプランで利用月数ごとの支払総額を試算した。すると、ほとんどの月で前者の方が安い。迷わず解約金フリープランを選んだ。 ところで、一般的な「サブスク」は所有に比べて金銭的に手軽だという触れ込みが多い。しかしクルマとなれば、それでも決して小さな金額ではない。私がずっと気になっていたのは、果たしてその真相はどうなのかということだ。ここで検証してみたい。 2人でKINTOに支払った総額は、解約金フリープランの申込金が31万9440円(6ヶ月分相当)。そこに月々の利用料5万3240円×22ヶ月=117万1280円をあわせて、合計149万720円(A)である。 仮に、従来の方式でディーラーを通じて購入し、同じ期間「所有」していたなら、いくらかかったのだろう。 執筆時点のメーカーサイトの試算によると、最初に支払う自賠責保険料や重量税、リサイクル預託金、ETCセットアップ手数料を合わせた実費は21万5560円(B)。そこに、自動車税が初年度(11ヶ月分)3万7500円、次年度が4万3500円の合計8万1000円(C)が加わる。 さらに、KINTOと同じ東京海上日動の任意保険に加入すると、同条件(KINTOでは年齢条件が無いが、私たちに合わせ21歳以上で試算)の見積もりは、初年度の保険料が年額30万8070円。2年目は25万7200円である(執筆時点)。今回の期間に合わせて2年目は10ヶ月分で計算すると、合わせて52万2403円(D)だ。 ざっとこれら(B)~(D)を足すと、諸費用だけで81万8963円(E)。もちろん、ここには車両価格は含まれていない。そこで、KINTOの総額(A)から、購入した場合の諸費用総額(E)を引くと、67万1757円(F)になる。 つまり、理論上はこの約67万円(F)が、1年10ヶ月・2万83kmを過ごしたGR86の車両そのものに支払った金額ともいえる。さて、これはオトクだったと言えるのか? ◆買うより安く乗れるのか? 中古車検索サイトで調べてみると、私たちのGR86とほぼ同条件(2022年5月登録のR、MTモデル/走行距離2.1万km)のクルマが、車両価格308万円で某トヨタ・ディーラーから販売されていた(※2024年4月時点)。ここから逆算して、仮に買取価格が250万円だと推定すると、新車価格(334万9000円(当時))に対して値落ち幅は84万9000円(G)である。 ここで(F)(理論上のKINTOの車両相当価格)と(G)を比べると、約18万円の差で(F)=KINTOの優位である。あくまで私たちに当てはめた試算である上、保険料や買い取り相場は変動するけれど、少なくとも私たちにとってはKINTOのほうがオトクだったと言えるだろう。 その上、私たちはKINTOの料金を折半している。つまり実際には、保険も税金もメンテナンスも全部込みで、1年10ヶ月で支払った額は一人74万5360円。これは特別なケースだが、俄然、おトク感が増す。 それに、もし「購入」していたら、いくら仲が良くても、例えばローン代金を折半してシェア、なんてことはしていないはずだ。どちらかの「所有」物である財産=クルマを日常的に共用しようなんて、万が一のことも考えると私には到底できないのである。 「どちらの物でもないからこそ、細かいことをあまり気にせずに気楽に楽しむことができた」とはNくん。私もその通りだと思う。金銭面だけでなく、ある意味「無責任」に乗れる気軽さこそ、「サブスク」が持つ魅力なのだと気付かされた。 とはいえ、良いこと尽くしではなかった。例えば、新車の吊るし状態からイジってはいけない、サーキット走行はできないという決まりが、途中から心底もどかしくなったのは事実である。マフラーを変えたい。車高調やバケット・シートを入れてサーキットを走りたい……。バランスに優れた完成度の高いスポーツカーだからこそ、途中からそのように思い始めたのだ。 念を押すとKINTOでは、GR86やGRヤリスに限っては、トヨタ販売店でのアフター・パーツの取り付けが認められ、そのまま返却も可能だ。そうでなくても原状回復をすれば良いことになっている。そうは言っても、結局サーキットを自由には走れないのだ。それに、どうしたって自分の物にはならないクルマに、そこまでお金をつぎ込む気にはなれなかった。その点、KINTOと相性が良いのは、スポーツ・モデルよりもファミリー・カーなのかも知れない。 むろん、このルール初めからわかっていたことで、あくまで私個人の問題である。KINTOの体制はといえば、契約中のサポートはとても手厚く、定期点検は担当ディーラーの担当者から欠かさず案内が届いた。担当店では購入した人と同じように丁寧親切な対応を続けてくれたから、クルマは最後まで絶好調で、故障やトラブルには1つも見舞われなかった。 GR86というクルマへの印象は、最初のリポートから基本的に変わらず、はやり抜群のハンドリング・マシンだった。しかし、特に1、2速で引っ掛かり感があるシフト・フィールや、繋ぎ方に慣れが必要なクラッチ・フィールには最後まで手を焼いた。Nくんはあまり意識しなかったらしいから、個人差もあるようだ。 何はともあれ、NくんとKINTOには感謝している。2年前の私はやはり、経済的にも、環境的にも、GR86を新車で買う決断はできなかった。それでも、登場したばかりのGR86を真っ先に乗り回すことができたのは、KINTOというサービスが、そして何よりNくんの提案があったからだ。そして、この仕事にも直結する、私の運転上達にも役立ったのは言うまでもない。 余談ながらGR86を返却したこの春、Nくんは2015年型 BMW M135iを中古で購入した。そして私は、奇しくもその直後に2008年型 BMW 135iクーペ(6MT)を手に入れた。ここまで重なるとはさすがに驚いたが、裏を返せば、GR86は、それだけ僕らのクルマ観に大きな影響を与えたクルマだったのである。機会があれば、これもまたリポートしたい。 約2年間に及ぶKINTOのシェアリング利用の経験は大成功だった。今は自信を持って、そう断言できる。 文=村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正(GR86) (ENGINE WEBオリジナル)
ENGINE編集部
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