グーグル出身者のAIスタートアップ、日本の利用者向けモデルを構築
(ブルームバーグ): 米グーグルの出身者らが創業した人工知能(AI)スタートアップのサカナAI(非上場、東京・港)はこのほど、日本の利用者向けの3種類のモデルを実験的に構築した。生成AIの開発で他国に後れを取る日本で、同社は存在感を発揮している。
3種類のAIモデルは、サカナAIの自然界の原理を応用する開発アプローチが機能することを示す概念実証にあたる。今後、順次アップグレード版を開発する予定で、同社の共同創業者のデビッド・ハ最高経営責任者(CEO)は「改良された『機械』は、私たちの業界や政府のパートナーによって間違いなく利用されるだろう」と自信を見せる。
サカナAIは、ハ氏と業界で評価されたAIに関する論文の著者であるライオン・ジョーンズ氏のグーグル出身者らが昨年の夏に設立した。創業間もないが、1月には米ベンチャーキャピタル(VC)や、NTTグループやソニーグループなどから総額3000万ドル(約45億円)を調達したと発表。日本で創業期のスタートアップがこれだけの額を調達するのは珍しい。2月には、経済産業省の生成AI基盤モデル開発の支援先の1社として採択された。
同社は現在主流の大規模モデルではなく、小さなモデルをつないでデータ処理するというユニークな開発方針をとる。AIのトレーニングにかかる膨大な時間と電力を節約しようという考えだ。多額の資金調達などの実績は、こうした新しい手法に挑戦するサカナAIに対する期待値の表れと言える一方で、日本のAI関連の企業の層の薄さも映し出している。
米は542社、日本は32社
米スタンフォード大学の調査によると、22年に新たに資金調達したAI企業の数は米国が542社、中国が160社、英国が99社に対して日本は32社にとどまる。
国は生成AIの開発力強化を進めるとしており、民間企業に求められる役割は今後増えると見られる。情報通信白書によると、日本のAIシステムの市場規模は27年に22年比2.8倍の約1兆1034億円まで拡大すると予想されている。