開業して35年の短距離路線で京都1000年の歴史を堪能する【京阪電鉄鴨東線】
■三条駅から出町柳駅までの約2km路線
大阪市内から京阪本線を利用して京都方面へ向かうとき、多くの電車は出町柳駅までとなる。しかし、京阪本線の終点は出町柳ではなく三条駅。三条から出町柳までは別の路線となり、それが京阪鴨東(おうとう)線である。 ■【画像】歴史を感じさせる島津創業記念資料館 鴨東線の路線距離は2.3km。すべてが地下路線で、途中にあるのは神宮丸太町駅だけだ。歴史は浅く開業は1989年10月。敷設計画自体は京阪電鉄の開業当時からあったものの、景観問題や京都市電との路線問題、戦争の混乱などがあり、なかなか実現されなかったのだ。しかし、1972年に京阪本線を地下化する方針が決まったことから、ようやく着工されたという経緯がある。 今回は、三条駅と神宮丸太町駅で京都の歴史を感じ、出町柳駅で神聖な気分に浸るというコースを紹介したい。
■豊臣秀次 無念の寺院と点在する幕末史跡
三条駅から地上に出ると、目の前に流れるのが鴨川だ。架かっているのが三条大橋で、2022年から行われていた改修工事が2024年1月に完了。欄干や防護柵などは新しくされたが、欄干の擬宝珠(ぎぼし)は残された。 12基ある擬宝珠の中には、豊臣秀吉が改築した1590年当時の物も現存し、また幕末の池田屋事件の際に付けられたとされる刀傷が残っているものもある。 池田屋に潜伏していた尊王攘夷派の志士を、新選組が襲撃した池田屋事件。その池田屋事件の場所が、三条通沿いに居酒屋として残っている。 池田屋跡から三条大橋方向へすこし戻ると、木屋町通との交差点になる。木屋町の三条通と四条通の間には居酒屋やバーなどのほかに、キャバクラやガールズバー、ホストクラブなどが軒を並べ風俗店もある京都有数の歓楽街である。 そんなにぎやかな木屋町の南側の入り口にあるのが瑞泉寺。ここには高野山で自害した豊臣秀吉の甥で養子の秀次と、秀吉の命令によって斬首された秀次の妻子や側室、侍女など39名が弔われているのだ。 寺の周囲はごった返しているのに、境内には人の姿もなく、ひっそりとしているのが印象的だった。 同じ木屋町でも三条通の北側は、南側と違って落ち着いた雰囲気で人通りも少ない。接客系の店は少なく、上品なたたずまいの飲食店が目につく。また、三条通から御池通を経て二条通までの間には幕末の史跡が多く、武市半平太の寓居跡、大村益次郎と佐久間象山の遭難跡、各藩邸跡などが点在している。 幕末好きには外せないエリアの1つではある。