「コバホーク」より一枚上手?同じく「夫婦で東大」の安野夫妻が都知事選で支持された「意外なワケ」
2024年9月に行われる自民党総裁選。8月中盤の段階で11人が立候補を検討していると言われる中、最初に出馬を正式に表明したのは「コバホーク」こと小林鷹之前経済安保相だ。東大卒、財務省勤務を経て、2012年の衆議院選挙で初当選。現在4期目で経済安全保障大臣も務めた49歳。186センチという長身で爽やか系だ。 【写真】安野たかひろ氏「独占」インタビュー 「政治とカネ」の問題で逆風が続いた自民党にとっては、「世代交代による刷新感を与えられる」と期待の候補者だ。小林氏の出馬会見は注目され、以来、テレビ出演も相次いでいる。 しかし、さすがの小林氏もワイドショーでの生トークに関しては十分な経験がないようで、フリップに「誤字」を書いてしまうという、エリートらしからぬ失敗も。そのことに関して、小林氏はXで以下のような投稿をする。
「コバホーク」、お前もか
“フジテレビ「イット」に中継出演。その後、中学生の娘から「パパ、漢字間違ってたよ」と連絡あり。 フリップに「生真面目(きまじめ)」と書くところを「気まじめ」と書いてしまってました。思わず「気持ち」が前面に出てしまいましたが、連絡をくれたのが嬉しかったです” 1974年生まれの若さと、サラリーマン家庭出身を強調する小林氏だが、ここで旧来型の対応を見せる。リカバリーショットに「娘」を登場させ、最後は「嬉しかったです」と締めて見せたのだ。誤字を他の誰でもなく、「賢い娘」に指摘されたことで自らの失敗を素直に認め、「娘とは良い関係を築いている良き父親」とさりげなく家族関係をアピールする――。 それこそが、有権者の好奇心をも満足させ、誤字を書いたことすら自身の親しみやすさのアピールへとすり替えられる技だと知っているからだろう。「子」ではなくあえて「娘」と記載しているところも「政治とジェンダー」を研究している身としては見逃せないポイントである。 「コバホーク」、お前もか、である。
選挙におけるジェンダー規範
“「妻」や「娘」にいさめられる私”を強調することで「自分褒め」「自分上げ」をしていく男性政治家たちは、一見女性を立てているようで、実は旧来型の男女の性別役割分担であるジェンダー規範を踏襲しているとも言える。 選挙に勝ち抜くには、夫は「戦い」に専念し、妻はその夫をケアし、キュアする役割を担う。妻の自己実現はあくまで夫の出世を介してで、当選の瞬間も共に万歳をするのではなく、ひたすら頭を下げる存在に徹する。このモデルの典型は岸田裕子総理夫人に見ることができる。 夫のミスが「誤字」であれば大事に至らないが、不倫等、不倫ともなれば大変だ。騒がれた男性議員の妻が登場し「私も悪かった」と謝ることで、ことを収めるといったシーンが繰り返されてきた。特に政治家は夫婦で「一蓮托生商売」のため、妻が不本意ながらもその役割をコンプリートしなければ、夫のみならず自分の足場を失いかねない。妻も必死である。 最近では夫が不倫をしても妻が登場しないケースもあるが(女性議員の不倫で夫が会見するといった例はほぼないことも興味深い)、総裁選に出るクラスともなると、夫婦で権力欲を共有しているだろうから、その対応については感情よりもいかにダメージを少なくするかという「危機管理」の一環として捉えられるのだ。 一方で、有権者の側にしても、ボリュームゾーンは依然として前時代のジェンダー規範意識を持つ人たちだと思われる。政治家に妻が夫を立てるような家族像を投影する微妙な社会圧はこれからも続くだろう。しかし、本年7月に行われた東京都知事選挙では、そうした「妻役割」に関して、変化の兆しも見えてきた。