【韓国】廃業者100万人で過去最多に 賃金などコスト増、自営業に打撃
韓国の2023年の廃業を届け出た事業者(個人および法人)が98万6,487人と過去最多となった。最低賃金の上昇に加え、高金利や高物価が追い打ちをかけ資金繰りに行き詰まる自営業者が急増している。個人事業主が多い韓国で自営業の経営環境悪化は、経済成長への下押し圧力になりかねない。 韓国国税庁によると、23年に廃業事業者数は98万6,487人で前年比11万9,195人増加し、統計を取り始めた06年以降で過去最多となった。新型コロナウイルス禍以降の20~22年は年間80万人台で推移していたが、23年には100万人をうかがう規模に拡大した。 昨年の最低賃金は9,620ウォン(約1,000円)と6年前と比べて5割上昇した。政策金利も3.5%と高水準で据え置かれ、輸入原材料価格の高騰やウォン安に伴うコストプッシュ型の物価高が継続したことで、自営業者の経営を圧迫した。 廃業者を業種別に見れば、小売業(27万6,535人)やサービス業(21万7,821人)、飲食業(15万8,279人)などが多くを占めた。足元では消費の低迷が続いており、今年も飲食業や宿泊業、卸小売業などを中心に廃業が続く可能性が高いとされる。 資金繰りの厳しさはローンの延滞率にも現れている。韓国銀行(中央銀行)によると、貸し付け条件が緩い代わりに融資の金利が高い「第2金融圏」(信用協同組合や貯蓄銀行など)でローンを受けた個人事業主の延滞率は、24年3月末時点で4.2%と15年6月末時点(4.3%)以来の最高値となった。 ■自営業割合はOECD7位 韓国は世界でも自営業者が多い国だ。経済協力開発機構(OECD)によると、韓国の経済活動人口に占める自営業者の割合は22年時点で23.5%と、OECD加盟国中で7位だった。米国(6.6%)やドイツ(8.7%)、日本(9.6%)など主要国と比べれば極めて高い水準となっている。 自営業の多さは、企業の平均勤続年数の低さが背景にある。韓国の大手200社の平均勤続年数(21年時点、ESG幸福経済研究所)は9.5年と10年にも満たない。中途解雇や社内競争に疲弊して会社を去る人が多く、退職後に起業するケースが主流になっている。 ■政府支援も延命措置の可能性 自営業の割合が多い国で廃業が相次ぐ現状を受けて、韓国政府は7月に支援のための対策案を打ち出した。約25兆ウォンの予算を組んで、コロナ禍以降に融資した政策資金の返済期間の延長や累計債務額の調整などに投入するという。 ただ、債務に苦しむ経営者に対する一時的な延命措置にとどまるとの懸念がある。賃金上昇などでかさむコスト増に加え、消費低迷に伴う売り上げの下振れなど経営環境が改善されない限り、廃業は増え続ける見通しだ。 自営業で生計を立てるのが一段と難しくなれば、ミドル・シニア層の暮らしの問題に発展することから、個人事業主の経営環境が改善する抜本的な支援策が求められている。