ホテルのバーに行ってみたい! オークラ東京「オーキッド バー」、おすすめカクテルは?
連載《hotel TIPS》Vol.5
編集長がホテルのおいしいものや楽しみを探しに行く「hotel TIPS」。今回の舞台はオークラ東京(東京・港)のメインバー「オーキッド バー」です。コーヒーを使ったユニークなカクテルがあると聞き、ぜひ一口味わいたいと思って訪れました。 【1分動画・写真はこちら】オーキッド バーはどんな雰囲気? バーテンダーは何を語る?
■「コーヒーを磨く」プロジェクトから誕生
お目当ての1杯がこの「エスプレッソ マティーニ」です。カクテルの王様といわれるマティーニと、風味豊かなエスプレッソのマリアージュ。シェークによるきめ細かなクレマ(泡)がグラスを覆い、その上に鮮やかなオーキッド(蘭=ラン)の花模様がチョコレートシロップで描かれています。 歴史あるオーキッド バーのメニューの中で、このカクテルは新顔の部類に入ります。誕生のきっかけはオークラ東京の大改装。2019年9月の再開業に合わせてレストラン・バー部門が着手した「コーヒープロジェクト」の中から生まれました。 ホテルのコーヒーと言うと、えてして「値段は高いけど、これといった特徴もない」という第一印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。そんなイメージを払拭すべく、全館で提供するコーヒーの品質のブラッシュアップに取り組んだのが、この「コーヒープロジェクト」です。 抽出するマシンや豆を厳選し、各レストランで出す料理と相性のよいコーヒーを研究。個性豊かな街中の専門店に負けじとスタッフも研修を積みました。オーキッド バーでは一部のバーテンダーにバリスタ資格を取得させ、フルーティーな風味が特徴の希少な豆「ゲイシャ種」のコーヒーをメニューに加えています。さらに試行錯誤の末、アルコールメニューとしてコーヒーカクテル「エスプレッソ マティーニ」を完成させました。
■手間暇かけて…クラシックバーの粋を極める
オーキッド バーのバーテンダー、押田達也さんによれば、「マティーニというとジンやウオッカベースのドライ(辛口)なカクテルのイメージが強いかもしれません。でも本来は、旬のフルーツやコーヒーを使うなどバリエーションが幅広く、女性も楽しみやすいカクテルです」。映画「007」シリーズの主人公、ジェームズ・ボンドには「ウオッカ・マティーニを、ステア(バースプーンで回す)ではなくシェークで」という名ゼリフがありますね。ベースをジンにするかウオッカにするか、味に加えるツイスト(ひねり)にオリーブを入れるのかレモンの皮を使うのか、といった具合に、人によってこだわりのオーダーがあるのも、マティーニの面白さといえるでしょう。 もちろんこのエスプレッソ マティーニも、手間暇かけたこだわりのレシピで作られています。エスプレッソは毎日、営業開始前に抽出して、しっかり冷やしておきます。ほかに使うのはコーヒー豆の風味を低温抽出したシロップとラム、オレンジビター。分量は合わせて60ミリリットルで、氷が溶け込みベストなおいしさになる量が90ミリリットル。この上をクレマが覆い、120ミリリットルのマティーニグラスの縁まで満たされます。オーキッドの模様を手早く描けば、芸術的な1杯の完成です。 グラスを口元に寄せると、ふんわりコーヒーの香りが立ち上り、ほっと心が安らぎます。ひと口含めば柔らかな甘みが広がり、その奥からしっかりしたウオッカのアルコールが追いかけてきます。美しいオーキッドの花は飲み進めてもしばらくは咲いたまま。ここ数年、ちまたではコーヒーカクテルが百花繚乱(りょうらん)の様相ですが、その中にあっても、クラシックバーの粋を極めたエスプレッソ マティーニは、ひときわ存在感を放つ逸品といえるでしょう。 ちなみに大手ホテルのバーは大概フードが充実しており、使い勝手がいいものです。オーキッド バーにも「ハヤシライス」「牛フィレのステーキサンドイッチ」をはじめ、人気メニューがずらりとそろいます。バーから生まれた進化形カクテルとともに味わってみてはいかがでしょう。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳