報道陣へのお土産を手にフォトセッションに臨む大橋悠依＝東京・内幸町（撮影・中井誠）

競泳女子個人メドレーで2021年東京五輪2冠の大橋悠依（29）＝イトマン東進＝が18日、東京都内で現役引退の記者会見を開いた。29歳の誕生日を迎えたこの日の会見には、長年指導を仰ぎ、10月からイトマンスイミングスクールの総監督を兼務する東洋大の平井伯昌監督（61）も同席。同スクールの特別コーチに就任した元五輪女王は、名伯楽の下で次世代の金メダリストを育成する。 涙はない。18日に29歳の誕生日を迎えた大橋は、終始笑顔で現役生活を振り返った。 「晴れやかな気持ちで引退を迎えることができる。大満足の競泳人生だった。届かなかったことをひとつ挙げるなら、世界新記録の樹立。（競技人生に点数を付けるとしたら）本当は120点と言いたいけど、95点」 2017年世界選手権で銀メダル。彗星（すいせい）の如く日本競泳界に現れ、長らく世界のトップで活躍した。会見に同席した東洋大・平井監督は「困難のあとに素晴らしい結果を出す選手。12年のJO（ジュニアオリンピック）で個人メドレーを泳ぐ姿を見て、私の中でビビッと来るものがあった」と懐かしい出会いも明かした。 東洋大入学後は貧血やけがなどで苦しんだ。東京五輪で2冠に輝いてからパリ五輪までの3年間はモチベーションの維持に苦悩。さまざまな経験を乗り越え、9月の国民スポーツ大会（佐賀）を最後に、現役を退いた。 今後は東洋大大学院でスポーツ栄養学を学ぶほか、イトマンスイミングスクールの特別コーチとして後進の育成に当たる。「日本水泳界が少し苦しい中にいる。五輪で金メダルに届くような選手を出していきたい」と新たな夢を口にした。 平井監督が「一生のお付き合い」というように、師とともに未来の水泳界を明るく灯す活動に注力する。大橋が笑顔で人生の第2ステージへと足を踏み出した。（角かずみ） ■報道陣にどら焼きを手渡し 幼稚園時代からスイミングスクールに通っていた大橋。所属先からプレゼントされた誕生日ケーキに立てられたキャンドルが目に入り、「もう29歳か…」としみじみとつぶく場面もあった。引退後は大学院生、コーチとして新たな人生がスタートするが、「今後はメディアにも積極的に出ていきたい」とPR。報道陣や関係者一人一人に、友人が描いたという自身の似顔絵と「感謝」の文字がプリントされたどら焼きを直接手渡し、会見を締めくくった。 ■大橋　悠依（おおはし・ゆい）　1995（平成7）年10月18日生まれ、29歳。滋賀・彦根市出身。草津東高を経て、東洋大4年時の17年世界選手権で、200メートル個人メドレー銀メダル。19年世界選手権400メートル個人メドレー銅メダル。初出場の21年東京五輪では、200、400メートル個人メドレーで2つの金メダルを獲得し、日本女子初の夏季五輪2冠を達成した。24年パリ五輪は200メートル個人メドレーで準決勝12位。175センチ。