撤退観測も飛ぶ「みんなの銀行」は浮上できるか、若年層傾倒が裏目でタイムリミット残り4年
計画未達の主因は、稼ぎ頭と期待していたカードローンの伸び悩みだ。2024年3月末の残高は118億円と、開業当初に見込んでいた800億円に遠く及ばない。アダとなったのは、30代以下が7割を占める特徴的な顧客層だった。 カードローンの審査にあたって、みんなの銀行は40代以上が7割を占める既存銀行と同じモデルを流用していた。その結果、モデルが想定する債務者とみんなの銀行の利用者属性にズレが生じた。若年層は与信枠が小さく、1件当たりの実行額は約25万円と計画値の半分強にとどまった。デフォルトも頻発し、不良債権比率は6~7%と想定の2倍に膨らんだ。
利回りの高いカードローンからの収益は、BaaSなどのシステム事業が収益化を果たすまでの期間を乗り切る上でも重要だった。みんなの銀行とシステム子会社ゼロバンク・デザインファクトリーを合わせた営業経費は2024年3月期で117億円と、同じFFG傘下の福岡中央銀行の約2倍。積極的な広告宣伝に加えて、エンジニアやデータサイエンティストなどを自前で採用して開発を内製化していったためだ。ストック収入であるカードローンが停滞した結果、重い経費構造が決算に直撃した。
■突き上げを食らったFFG 赤字体質のみんなの銀行に対して、FFGは「あくまで新規事業」として鷹揚に構えていた。黒字化の時期も当初の2023年度から2025年度、そして昨年には2027年度へと先送りした。反面、投資家はグループの利益を食い潰すみんなの銀行への態度を硬化。「いつになったら撤退するのか」という声まで上がるようになった。 投資家からの突き上げを無視できなくなったFFGは、2027年度の黒字化を掲げつつ、収益化が困難になった場合のプランBやCもにじませた。そのワーストケースとして例に挙げたのが「撤退」だ。
FFGから「2027年度までに黒字化」と、事実上のタイムリミットを設定されたみんなの銀行。残り4年で黒字化を果たせなければ、一度は否定した撤退観測が再び現実味を帯びる。 喫緊の課題は、収益柱であるカードローンのテコ入れだ。みんなの銀行はこれまで実行したローンの実績を基に、若年層に特化した与信モデルを構築。今年度から与信審査に自前のモデルを採用し、残高の伸長やデフォルトの抑制を図る。 もう一つの課題であるシステムコストは、BaaSの収益化がカギを握る。現時点でBaaS基盤の提供先は5社あるが、BaaS経由での口座獲得数は5万と進捗は鈍い。顧客基盤を有する大口先の開拓を通じて口座獲得を急ぐ方針だが、みんなの銀行のBaaS手数料は口座数ではなく取引量に連動する。口座獲得だけでは不十分で、決済利用を促し稼働率を高める必要もある。