【アーセナル分析コラム】なぜ危機的状況でトッテナムに勝てたのか。ウーデゴール、ライス不在で見せた“ごまかし”と工夫とは
プレミアリーグ第4節トッテナム対アーセナルが現地時間15日に行われ、0-1で終了した。主力選手を複数欠くという厳しい状況で敵地に乗り込んだアーセナルだったが、苦しみつつも自慢の堅守を披露して勝利。ミケル・アルテタ監督は今季最初の試練をどう乗り越えたのだろうか。(文:竹内快) 【動画】トッテナム対アーセナル ハイライト
今季最初で最大の試練
196回目のノースロンドン・ダービーはアーセナルにとって大きな試練となった。 なぜなら、絶対的主力が不在の状況でダービーマッチを迎えることになったからである。負傷によって主将マルティン・ウーデゴール、ミケル・メリーノ、リッカルド・カラフィオーリ、冨安健洋、キーラン・ティアニーが戦線を離れ、前節レッドカードを貰ったことでデクラン・ライスが出場停止に。さらにオレクサンドル・ジンチェンコもベンチ外となった。ウーデゴール、メリーノ、ライスの中盤のファーストチョイスたちが揃って欠場という考えられる限りで最悪の状況だ。 特に大きな問題はウーデゴールとライスがピッチ上にいないことである。攻守の要である両選手の不在は、チームのプレースタイルやシステムに大きな影響を与えていた。 そんな苦しい状況でも、アーセナルは勝利を掴み取っている。64分にコーナーキックからガブリエウ・マガリャンイスが奪ったゴールを最後まで守り切った。 宿敵トッテナムにはどんな理由があっても負けてはならないし、絶対王者マンチェスター・シティを超えるためには1点も勝ち点を取りこぼすことはできない。大きなプレッシャーがかかる中、ミケル・アルテタ監督率いるアウェイチームはどのようにこの試練を乗り越えたのだろうか。
ライス&ウーデゴール不在をどう補う?
アルテタ監督はこれまでの[4-1-2-3]からシステムを変更した。 お馴染みのメンバーに加えてレアンドロ・トロサールがトップ下に入り、ジョルジーニョとトーマス・パーティが2ボランチを組む[4-2-1-3]だ。非保持はトロサールとカイ・ハフェルツが2トップを構成する[4-4-2]の布陣で守る。 中盤の構成を変えた狙いは、ライスの抜けた穴を補うためだ。圧倒的な機動力で広大なエリアを1人で守り切ってしまうライスの代わりを務められる選手はなかなかいない。ライス不在のこの試合では、ジョルジーニョとパーティでそのエリアを分け合うことで守備の安定を図った格好だ。 ジョルジーニョはあと一歩足が届かずボールを奪えないシーンや単純なスピードの差で後手を踏んでしまうシーンも見られたが、最後まで足を止めず、声を張り続けて中盤を守り切って見せた。これでライスの穴埋めは成功だ。 しかし、そうなると攻撃の枚数は1つ少なくなる。ウーデゴール不在による対応は成功したとは言い難いだろう。チームの攻撃力を最大限引き出すことはできなかった。 ブカヨ・サカ、ベン・ホワイトの右サイドはそれが顕著だった。彼ら2人だけでも十分な出力が担保されているが、この試合ではウーデゴール不在によってプレーの選択肢が限られていた印象だ。右サイドでホワイトが高い位置を取り、サカが内側のレーンを走る「いつもの形」ではバランスをとるウーデゴールがいないため、ディスティニー・ウドジェ、ジェームズ・マディソン、そしてソン・フンミンに囲まれて数的不利に陥り、しばしば手詰まりになってしまっていた。 この問題を解決するために、レアンドロ・トロサールやハフェルツが右サイドに顔を出すことで”ごまかしていた”が、彼らは他にもタスクが多く、完全なウーデゴール役にはなれず。明確な「攻め筋」「勝ち筋」を見つけられない中で、輝きを放ったのがアーセナルのディフェンス陣だ。