ドラマ「婚活1000本ノック」のヒロイン綾子よ、「ビッグボス」「熱盛」あだ名センスが最高すぎる
3時のヒロインの福田麻貴さんが絶妙な演技を披露している、ドラマ『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)。 独自視点のTV番組評とオリジナルイラストが人気のコラムニスト・吉田潮さんに、その見どころポイントをうかがいました。
ヒロイン綾子の節穴っぷりと毒舌がツボ
崖の上でウエディングドレス姿の女性が大勢の敵に囲まれている。黒装束の敵は「結婚する気ゼロな奴」「1円単位でワリカンするケチ男」「壺と浄水器買わない?」「後出しバツ3男」「自称経営者(ホントは無職)」「15歳サバ読み野郎」などなど。 刀を振り回し、バッサバッサと斬っていくが、彼女も相応の傷を負う。「真剣に婚活に取り組む女性を襲う典型的なクズ男」という表現だ。満身創痍で挑む主人公・南綾子を演じるのは、3時のヒロイン・福田麻貴。『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)の初回オープニング映像である。 婚活の現実を毒と皮肉と自虐とユーモアで綴るドラマだが、よくあるドタバタラブコメかと思ったら想定外の中毒性があった。作家でもある綾子の賢さと面白さと図々しさは、どんどんクセになっていく。 登場する男たちに対する値踏みのえげつなさ、そのくせ激しい面食いで、あまりにも男を見る目がない。自分の欲望に忠実で潔いし、妥協しない姿勢は称賛したい。ただ純粋に恋をしたいというジレンマも伝わってくる。綾子の節穴っぷりにはツッコミとダメ出しを入れ、綾子の毒舌っぷりで憂さ晴らし。そんな夜を過ごすのも悪くない。
本名ではなく、あだ名で呼ばれる男たち
「男を容姿で判断して、ルッキズムじゃないか!」という男性の声も聞こえてきそうだ。確かにこれが男女逆転で作られたら、炎上どころか大火事だ。ただ、綾子は連戦連敗、うまくいかずに痛い目にも遭う。あさはかなルッキズムのおおいなる代償を払っているという構図だ。 登場する男たちの多くは、本名ではなく、綾子がつけたあだ名で呼ばれる。顔が濃くて、何しゃべってんのかわかんない男は“アベちゃん”(演じたのは阿部寛のモノマネで有名なラパルフェ・都留拓也)、歯が白くて襟が立ってる男は“ビッグボス”(演じたのは新庄剛志のモノマネで有名なきつね・淡路幸誠)。 合コンで出逢った天真爛漫な美形は、平和の象徴として“ハト男”(白濱亜嵐)。実はポリアモリスト(複数恋愛主義者)で、年代別の複数の女性と付き合っていて、30代の空き要員として綾子に声をかけたこともわかる。 他にも、婚活会場でマスクを外さず、無礼な態度だったのが“マスクマン”(ゆうたろう)。可愛い顔だが、汚部屋に住み、ゴムなしでいたそうとするインモラル男だ。ダンス合コンで会ったのは熱い男(大貫勇輔)。松岡修造に負けない暑苦しさを“熱盛”と呼び、綾子は心揺さぶられかけるも、結婚詐欺師であることが判明。 唯一、常識や思慮深さを兼ね備えた男がいた。独特な髪の生え際の形から、綾子は“ハートパイ”と呼ぶ。演じたのは、超二枚目俳優で深夜の恋愛ドラマの帝王と呼ばれた竹財輝之助。かつらをかぶり、ヒゲは濃いめ、鼻毛飛び出し&歯が抜ける場面まであって、完全にコント劇場。やりすぎだが、逆にネットで話題に。ハートパイは知的で穏やかでプレゼントのセンスもよくて、すごくいい人なのに、「生理的に無理」という綾子。でも、そこがこのドラマの大事な肝。相手を好きになれるか、恋心を抱けるか、セックスできるか。傷だらけになろうと、誰に何と言われようと、綾子が妥協せずに理想を追い求めることがメインテーマなのだ。 こうなると、毎回婚活で遭遇する男たちが楽しみだ。芸人から二枚目俳優まで、持ち味を生かしながらも必ずオチがある。第4話は野村周平が登場予定。予告を見る限りでは厄介な母親(萬田久子)が鬼門になるようだ。