「40人学級に戻すべき」財務省の本当の狙いは?
省庁間で駆け引き 政策論議は置き去り
そう考えると、13年度全国学力テストのデータで効果をめぐって財務省が反論する意図も見えてきます。 13年度調査は、10、12年度(11年度は東日本大震災により調査を見送り)の抽出調査・希望利用方式から悉皆(しっかい)(全数)調査方式に戻したことをきっかけに、「きめ細かい調査」として詳細な調査と分析が行われました。文科省はその速報値を根拠に14年度概算で、期間中に計3万3500人の教職員定数改善を図る「教師力・学校力向上7か年戦略」を要求。結局は年末までの予算折衝でゼロ査定となったのですが、15年度概算では「授業革新」や「チーム学校の推進」を理由に10年間で計3万1800人を改善する「新たな教職員定数改善計画(案)」と形を変えた要求をしています。 一方の財務省はここ数年、▽小中学生一人当たりの公財政支出は国際的にみても十分手厚い、▽子どもの数の減少ほど教職員数は減っていない――といった主張を繰り返し、対GDP比で経済協力開発機構(OECD)中最低レベルとされる公財政支出の低さを指摘し続ける文科省に反論しています。今回の財政審資料でも、文科省概算要求のもう一つの目玉である幼児教育の段階的無償化(事項要求)の財源として、教員給与の優遇分解消(国負担220億円)とともに、小1を40人学級に戻して生み出す分を充てることを提案しています。 財務省の「40人学級」主張によって、文科省は防戦に傾注しなければならなくなります。逆に財務省にとっては、たとえ主張が通らなくても、定数改善計画をけん制することで国の財政を抑制しつつ、幼児教育無償化に色をつけるという政権の要請にも一定応えることができれば「勝ち」と言えるでしょう。 しかしそうした省庁間の駆け引きをよそに、エビデンス(根拠)に基づいた将来目指すべき公教育像とそのための条件整備という本来なされるべき政策議論が一向に深まらないのが残念に思えてなりません。 (渡辺 敦司/教育ジャーナリスト)