「40人学級に戻すべき」財務省の本当の狙いは?
公立小学校1年生で実施されている35人学級を40人に戻すよう財務省が提案したことが、論議を呼んでいます。Yahoo!の意識調査では投票した13万人のうち「40人学級に戻すべき」30.9%に対して「35人学級を続けるべき」69.1%と35人学級維持派が圧倒的。35人学級の維持を求めて東京都品川区の保護者が募ったインターネット署名には1万7500人の賛同が集まっています(同8日現在) 。ただし同省の主張には、35人学級か40人学級かという問題以外の、別の意図も透けて見えます。
データの読み方が「効果」の有無を左右
国の財政や予算について検討する「財政制度等審議会」の財政制度分科会に財務省主計局示した資料(10月27日)によると、文部科学省が概算要求資料として示した13年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、▽少人数学級を推進するための加配措置(1万500人)の政策効果が認められない、▽文科省は小学校のチームティーチング(TT)と中学校の習熟度別指導で平均正答率が向上したというが、同じ基準に立つなら少人数学級の平均正答率は悪化したと評価せざるを得ない――と指摘。 さらに、小学校生活になかなか適応できずさまざまな問題を起こす「小1プロブレム」の解消のため11年度に40人学級から35人学級に引き下げたことに対して、12年度はむしろ小学校のいじめや暴力行為に占める1年生の割合は少し増加しているとして、「明確な効果があったとは認められず、厳しい財政状況を考えれば、40人学級に戻すべきではないか」としています。40人学級に戻した場合には教職員数を4000人減らすことができ、約86億円の財政削減効果があるといいます。 ただ、こうしたデータをめぐる議論には、幾つかの疑問が浮かんできます。 そもそも全国学力テストは毎年の出題レベルが一定ではないため、いくら過去との比較ができるようにしても(文科省資料では平均からどれだけ離れているかを相対的に示す)、改善したかどうかの決定的な証拠とはならないこと。いじめの件数は04年度から「発生件数」ではなく学校がどれだけ認知したかの「認知件数」に改められており、12年度は前年の大津市中学生いじめ自殺事件の社会問題化を受けて再調査など丁寧な把握が行われた結果、小学校全体で認知件数が前年度の3.5倍になるなど単純な比較ができないこと――などです。 内田良・名古屋大学大学院准教授(教育社会学)も、「発生件数」である不登校が小1で減っていることと比べて、35人学級にしたことでいじめや暴力行為が「ちゃんと教師の目にとま」ったということであり、「『35人学級に効果あり』を意味する」と結論付けています(Yahoo!ニュース個人)。 ただ、そうした個々のデータ解釈の是非はあまり問題ではないかもしれません。肝心なのは、財務、文科両省が例年、概算要求をめぐって自分たちに都合の良いデータと解釈を示しながら応酬するという「空中戦」を繰り返していることです。