30代におすすめ 「読んでおくと将来に差が出る」ビジネス書11冊
30代は、ビジネスパーソンとしての基本を押さえた上で、さらに自分で問いを立てて、仕事をしていくことが求められます。特に今はAI(人工知能)が進化し、「問いを立てることの重要性」がさかんに言われていますよね。問いを立てられる人は、他人が気づかないチャンスに気づき、自分で事業をつくり出せます。自分の会社がまだ取り組んでいないビジネスを見つけ、新規事業を立ち上げられるかもしれません。 【関連画像】『1年で億り人になる』 今回は、30代のうちに身に付けておきたい、マネジメント・思考・経営の3分野で「問いを立てる力」を養えるビジネス書を紹介します。 1.『THINK BIGGER』 シーナ・アイエンガー著、櫻井祐子訳、NewsPicksパブリッシング ■思考 著者のシーナ・アイエンガーは全盲のコロンビア大学ビジネススクール教授で、『選択の科学』(文藝春秋)もベストセラーとなりました。本書では「発想するとは選び抜くことである」と説き、大きなことを成し遂げるための細かい手法について書かれています。 僕がこの本で最も感銘を受けたのは、「課題をサブ課題に分解する」という考え方です。例えば、アメリカの主婦、ナンシー・ジョンソンは、「(当時、ぜいたく品だった)アイスクリームを庶民も食べられるようにするには」という課題を、「アイス作りに使う氷の量を減らすには」「アイスを素早く冷やすには」「アイスの撹拌(かくはん)を省力化するには」「アイスをより滑らかでクリーミーにするには」という4つのサブ課題に分解して取り組みました。そして1846年に手回し式のアイスクリームフリーザーを発明。特許を取得し、ビジネスで成功します。 クリアすべき課題を細かくして絞り込み、一つずつ取り組んでいくことで、大きなゴールに近づく発想が生まれる。イノベーションを生み出す発想の過程を具体的に解説してくれている1冊です。これから起業思考を育てていく必要がある30代に読んでほしいヒントがたくさん書かれています。 2.『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 アービンジャー・インスティチュート著、金森重樹監修、冨永星訳、大和書房 ■マネジメント 世界数十カ国に拠点があり、ビジネス、法律、経済などさまざまな分野でコンサルティングを行っているアービンジャー・インスティチュート。その専門家集団の中で、哲学者や心理学者、法律家たちが長年の研究を基に書いたのがこの本。「身の回りの人間関係はすべて自分が原因で引き起こしている」、つまり「自分の小さな箱に入っている状態」だとして、どう解決するかを説いています。 「自分の小さな箱」とは何かというと、「自己欺瞞(ぎまん)」のこと。ビジネスでは自分を正当化したくなる場面が多々ありますよね。でも、そう思ってばかりだと人はついてこないし、自己欺瞞のワナから抜け出せない。自分は抜け出したと思っていても実は抜け出していない──ということはよく起こります。では、どうすればその状況から抜け出せるのか。 この本には、そのヒントがたくさんあり、マネジメントの心構えを学ぶのにも役立ちます。実はこの本は昔、『箱─Getting Out Of The Box』というタイトルで出版されており、「良い本なのにタイトルがイマイチだなあ」と思っていたんです(笑)。改題された新装版を元ラグビー日本代表の五郎丸歩さんが推薦したことでベストセラーになりました。 3.『イェール大学集中講義 思考の穴』 アン・ウーキョン著、花塚恵訳、ダイヤモンド社 ■思考 著者のアン・ウーキョンはイェール大学の心理学教授。「思考の不具合」について考える「Thinking」という講義をしたところ、毎週大講堂が満員になったという逸話の持ち主です。取り上げる事例も、ノーベル賞研究からBTSのダンスまで幅広く、読んでいて楽しめるのも特徴です。『FACTFULLNESS』共著者のアンナ・ロスリング・ロンランドをはじめ、名だたる人物が絶賛しています。 簡単に説明すると、書かれているのは人間の「認知バイアス」についてです。行動経済学や認知科学では「人間には認知バイアスがあるから注意せよ」とよくいわれていますよね。でも、結局のところ「人間はそのバイアスから逃れられない」「そのバイアスを避けるには、それ以上の処方箋が必要だ」と著者は言います。イェール大学のエリートたちを夢中にさせた、論理的思考力を向上させるための最新の方法はとても勉強になりますよ。 4.『GIVE & TAKE』 アダム・グラント著、楠木建監訳、三笠書房 ■マネジメント 著者は、米国のビジネススクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」の史上最年少終身教授になった人物で、組織心理学者。「ギバー(人に惜しみなく与える人)」「テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)」「マッチャー(損得のバランスを考える人)」のうち誰がビジネスで成功するかを説いています。 今の時代、ビジネスパーソンは「ギバー」であるべきで、「テイカー」や「マッチャー」では良いチームワークが築けない、と書かれています。なぜ、他者への思いやりがビジネスの成功につながるのか。具体的な事例を紹介しながら解説してくれます。 チームづくりやマネジメント、コミュニケーションのヒントにもなる本。ビジネスの現場でさまざまな役割を担う30代にぜひ読んでもらいたい1冊です。 5.『稲盛和夫の実学』 稲盛和夫著、日本経済新聞出版 ■経営 「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫さんの名著です。稲盛さんの実体験からキャッシュベース、採算向上、透明な経営など経営の原則を説明しています。ビジネスパーソンは絶対に読むべき1冊と言ってもいいでしょう。 本の帯に「会計がわからんで経営ができるか!」という稲盛さんのセリフがあるのですが、確かに、ビジネスパーソンにとって会計の勉強はマストなんです。会計を学ばずに良いマネージャーにはなれないと思います。 やはり、どこまで数字で経営をイメージできるか、数字から実態を見抜けるかは大事ですよね。会計が分からないと、手っ取り早く数字を上げたい現場にだまされたり、不正が見抜けなかったりということに巻き込まれるかもしれません。そういえば、亡くなった僕の師匠も、この本を常時20冊ぐらい手元に置いて、知り合いの経営者に配っていました。 6.『とにかく仕組み化』 安藤広大著、ダイヤモンド社 ■マネジメント 『リーダーの仮面』『数値化の鬼』(いずれもダイヤモンド社)に続く、「識学」安藤広大さんのシリーズ3作目。この本では「人は責めるな、ルールを責めろ」として、マネジメントを成功させる思考法について紹介されています。 前作の2冊も良い本でしたが、3冊目の本書は、人の上に立つマネジャーの思考法について書かれています。安藤さんは「性弱説」、つまり「人はラクをしたがる生き物だから、仕組み化で管理するのが大事だ」と言っています。 失敗や課題解決のために、仕組みづくりをどうしたらいいのか。わりとベーシックな内容が書かれていますので、マネジメントの入門書としてもぴったりだと思います。 7.『「超」入門 失敗の本質』 鈴木博毅著、ダイヤモンド社 ■経営 第2次世界大戦での日本軍の敗因を研究した『失敗の本質』 を経営コンサルタントの鈴木博毅さんが23のポイントにまとめ、ビジネス事例も入れた超訳版。『失敗の本質』の著者である野中郁次郎さんも推薦しています。 組織論の名著である『失敗の本質』は難解な文章も多く、読みにくいと感じる人も少なくありません。それを分かりやすくまとめたのが、この本です。 最大のポイントは「指標が勝敗を決める」ということ。本の中で例として出てくる零戦(ゼロセン)は「軽くて速い機体」でしたが、アメリカ軍が集団で攻撃してくると逃げ切れなくなりました。そこでもっと防弾性能が高く、強固な機体を開発すべきところを日本軍は軽くて速い機体を追求しようとしたために敗北しました。 現代を見ても日本企業は製品単体の性能を高めようとしますが、マイクロソフトは互換性やネットワークに広がりがあるかを考えています。本書を読んでいると、勝てる企業は従来の指標を覆す新指標で勝負していることが改めて分かります。 8.『経営の教科書』 新 将命著、ダイヤモンド社 ■経営 「社長の仕事」のうち、業種や業界によって仕事内容が異なるのは、全体の20%だといわれています。残る80%の社長の仕事は、どの業界でも同じ。「経営の原理原則」を身に付け、実践することです。では、会社を伸ばす社長、つぶす社長の違いはどこにあるのでしょう。この本では、経営者が持つべき基本姿勢を解き明かしています。 ジャパネットたかたの高田明前社長は、この本の「社長の辞め際、2つのいいタイミング」という部分を読んで、引退を決めたといわれています。本書には、後継者選びの方法も書かれていて、「スキル」「実績」「価値観」「相性」を共有できる人を選ぶべきだとあります。ちなみに、高田社長は長男の旭人氏を後継者に選び、2015年に退任しました。ジャパネットたかたの2023年12月期の連結売上高は、前年比5.7%増の約2630億円と成功を収めています。 統計を見ると、日本は「20年間ぐらい社長が変わっていない」という企業が多いんですよ。ぜひ、そんな企業の社長にも読んでもらいたいですね。30代がこの本を読むメリットは、経営の基礎を体系的に理解できることです。意外と曖昧になりがちな「ビジョンと使命の違い」などについても書かれている、経営の教科書です。 9.『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン著、ティム・フェリス序文、櫻井祐子訳、サンマーク出版 ■思考 ナヴァル・ラヴィカントはインド生まれで、36歳でUberに投資して起業家として急成長するなど、シリコンバレーのスタートアップ界では「生きる伝説」と呼ばれている人物です。ナヴァル・ラヴィカントは貧しい移民の子どもでしたが、米国でエンジェル投資家とスタートアップ企業をつなぐプラットフォーム「AngelList」の創業者となりました。 この本では、「時間の切り売りをしていてはリッチになれない」「人生では地位のゲームを避けなくてはならない。怒りに満ちた闘争的な人物になってしまうからだ」など、ナヴァルの視点、思考、経験から繰り出される含蓄のある言葉が数多く紹介されています。 個人投資家であり、シリコンバレー屈指の事業創出者でもあるナヴァルの、投資に対する考え方や生きるヒントについても書かれています。「お金持ちになりたい」という人にも、「幸せになりたい」という人にも、それぞれのヒントが詰まった1冊です。 10.『イーロン・マスク(上)(下)』 ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳、文藝春秋 ■思考 この本は、イーロン・マスクの公式自伝です。著者は『スティーブ・ジョブズ』を書いたウォルター・アイザックソンです。イーロン・マスクがどういった半生を過ごしてきたかが分かる1冊です。 子ども時代は南アフリカで過ごし、激しいいじめを受け、エンジニアである父親からも虐待を受け──といった壮絶な日々を送る一方、何時間もぶっ通しで本を読み、父親からエンジニアリングを学ぶという今につながる時間も過ごしています。 普通、人は恐怖心があると判断を変えることがありますよね。でも、マスクが無謀ともいえるほどリスクを取れるのは、こうした日々を送ったからかと納得がいきます。この本を読むと、誰も思いつかないようなアイデアが生まれた背景が分かります。 仕事での立場が上がる30代になると、やはり誰かしら優れた人の伝記は読んでおくべきではないかと思います。すごい人の伝記を読むと「自分はこうはなれない」と思うかもしれませんが、本書を読むと、あのマスクでさえも「インプットのたまものなんだ」と分かります。 11.『1年で億り人になる』 戸塚真由子著、サンマーク出版 ■思考 1700人が実践して、「億り人」が誕生しているという「現物投資」について説明した本。億り人になるには「労働者マインド」から「大富豪マインドへの脱却」も必要だと書かれています。 この本は、今とても勢いがあるベストセラーなので選んでみました。世の中にはさまざまな投資法があるので、どれが正解とは言えませんが、やはり「年収と資産は違う」ということは理解しておく必要があります。 起業家は「お金が貯まってから何かを始めよう」とは考えず、お金を借りてでも資産をつくろうとします。一方、どれだけエリートの会社員でも、結局は資産家のために働き、自分の時間が疎外され、仕事への情熱もなくなりがちです。この本を読むと、こうした小作人マインドでは資産家になれない、資産家になるにはまず、「資産を持つと決めること」だと分かるんですよね。 日本の平均初婚年齢は30代です。30代になると、具体的にライフプランを立てたり、お金のことを真剣に考え始めたりする人も増えるでしょう。お金と幸せについて考えたい人は、手に取ってみてください。 取材・文/三浦香代子 編集協力/山崎綾 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部)