固定残業制って「定額働かせ放題」なんですか? 定時で帰れば「得」のように思うのですが、ブラック企業なのでしょうか? 避けたほうが良いですか…?
固定残業代(みなし残業代・定額残業代)については、見かけの基本給を高く見せるなどの目的で、間違った使い方も横行しているようです。 固定残業代は、適切に用いれば会社にも従業員にもさまざまなメリットがあります。本記事ではどのようなメリットか説明した上で、具体例とともに適切な扱いかどうかを見分けるポイントを紹介します。 ▼勤続20年でも年収は「280万円」貯蓄も「30万円」しかないのは少なすぎ!? 転職したほうが良いの?
固定残業代とは何か
固定残業代というのは「一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対する割増賃金を定額で支払う制度」です。「時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度」と考えれば分かりやすいでしょう。この制度を、「みなし残業制」とか「定額残業代」などと呼ぶ人もいます。 企業からすれば、求人の際に基本給に固定残業代を加えて提示することで「高賃金」とアピールすることもできます。毎月の残業代計算も効率化できるといったメリットがあります。従業員にとっても、残業を減らしても「固定残業代」はちゃんと払ってもらえるので手取りの賃金が安定します。生産性向上へのインセンティブにもなります。 一方では、基本給を高く見せかけるごまかしとか、「定額働かせ放題」などといった間違った運用をしている会社もあり、「固定残業代=ブラック企業」と考える人もいるようです。
固定残業代について厚生労働省の指針
このような誤った運用も受けて、厚生労働省は2018年1月の職業安定法指針で この制度の定義を明確にしました 。求職者向け、求人向けそれぞれのパンフレットで分かりやすく説明されています。この内容は直近のパンフレットでもそのまま受け継がれています。 「時間外労働の有無に関わらず一定の手当を支給する制度(いわゆる「固定残業代」)を適用する場合は、以下のような記載が必要です。 1.基本給 ××円(2の手当を除く額) 2.□□手当 (時間外労働の有無に関わらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給) 3.○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給 この内容を整理すると次のようになります。 ・通常の労働時間の賃金の部分と割増賃金部分とが判別ができること(明確区分性) ・固定残業代が何時間分の時間外労働等の対価なのかを明確にすること。通常の時間外労働と同様に、労働基準法に定める割増率で計算されていること(対価性) ・固定残業時間を超える時間外労働については、割増賃金が追加で支払われること この基準を守っている会社であれば、別に問題はありません。ホワイト企業といえます。