わずか3~4年「検診受けなかった」彼に起きた悲劇 40代で死を意識した医師が後輩に遺した「言葉」
「親としてやり残したことがたくさんあるのに」「自分が死んだら意味がないよ」。わずか3~4年、がん検診に行かなかった間に、末期の肺がんが見つかった働き盛りの40代医師は、悔やみきれない様子で語った――。 これまで1000人を超える患者を在宅で看取り、「最期は家で迎えたい」という患者の希望を在宅医として叶えてきた中村明澄医師(向日葵クリニック院長)が、若い人たちにも知ってもらいたい“在宅ケアのいま”を伝える本シリーズ。 【表で見る】国が推奨する胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん「がん検診」の中身
今回のテーマは、がん検診。コロナ禍の受診控えの結果、進行がんが見つかった60代女性や、仕事優先で検診を後回しにした数年で、がんが進行した40代医師の例から、検診の重要性を考えていきたい。 ■介護で検診を受けずにいたら… 同居する母親の介護を、4~5年にわたって支えてきたAさん(60代)。 私はAさんの母親の担当医で、母親の主な介護者であるAさんとは、日頃から接する機会がありました。いつも母親のことを気にかけて寄り添ってきたAさんに、がんが見つかりました。
聞けば、少し前から体調に異変を感じていたものの、コロナ禍から病院に行くのを敬遠していたとのこと。「がんかもしれない」という考えが頭をよぎったこともありましたが、「まさか自分が」と、考えを打ち消していたそうです。 コロナが落ち着いてからも、なかなかがん検診を受けようとせず、重い腰を上げて、5年ぶりに検診を受けたところ、一瞬よぎった予感が的中。Aさんは、ショックのあまり現実を受け入れられない様子でした。
そんななかでも、「化学療法が始まって体調が悪くなったり、手術で入院となったりしたら、お母さんの介護をどうしよう」「もしお母さんより、自分の命が先に終わってしまったら……」と、母親の今後を心配しています。「もう少し早く検診に行けば良かった」と、涙ながらに話すAさんは、深い後悔に包まれている様子でした。 ■コロナで遠のいたがん検診の結果 コロナが感染症法の5類に移行して1年が経とうとしていますが、コロナ禍のがん検診控えの影響が続いている傾向があります。