汗かき地蔵、お堂再建 田鶴浜・下東地区、地震で損壊 住民寄付「復興見守って」
●建具職人が伝統の技 能登半島地震で損壊した七尾市田鶴浜町下東地区の地蔵堂が29日までに、再建された。屋根瓦が崩壊し、「汗かき地蔵」として親しまれる地蔵は雨ざらし状態が続いたが、約370年の歴史を誇る田鶴浜建具の技術で元に戻した。同町には倒壊した家屋が多く残り、住民は復興に向けて歩む地域を見守り続けてほしいと地蔵に手を合わせている。 汗かき地蔵は高さ約1メートルで、のと鉄道田鶴浜駅から約90メートル離れた市道脇にある。地域に火災が起きる前に顔が汗をかいたように黒に変色し、住民に知らせると伝わっていることが由来で、1917(大正6)年に造られた地蔵堂に安置されてきた。 元日の地震で地蔵堂は崩れ、地蔵は土台から転落した。手入れを続けてきた「ふるさとの駅を守る会」の天野かつゑ事務局長(81)が1月中旬、地蔵堂を見に行くと、誰かがすだれで屋根を応急措置し、地蔵は元の位置に戻されていた。天野さんは「誰が戻してくれたのか分からないが感謝している。早く地蔵堂を建て直してあげたい」と地蔵堂再建へ動き出した。 天野さんは、下東地区など地蔵堂周辺の3町内会に建て直しを提案。集まった寄付金で建具職人の多村正則さん(56)=七尾市田鶴浜町=に修繕を依頼し、合板を使った高さ約1・3メートル、幅約1メートルの地蔵堂が8月下旬に完成した。 田鶴浜町では多くの家屋が倒壊したほか、道路も大小の亀裂が残り、震災前の景色に戻るには時間がかかる。天野さんは「地蔵堂の再建が町の復興の第一歩になったと思う。地域で大切に守っていきたい」と話した。