「オレが責任を取る」という上司は信用するな!【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第7回
■きちんと部下のことを見守っているのがいい上司 里崎 そう、絶対にそうなる。だから、逆にプレッシャーになるのは「結果でモノを言わずにプロセスを重視する上司」ですよ。そういう人は、たとえ結果がよくてもその過程に間違いがあれば叱られるから。ボビー(・バレンタイン)の場合、プラン通りにやることをやってホームランを打たれても、「グッジョブ」って褒められるんです。 五十嵐 古田(敦也)さんもそうだったな。「相手もプロなんだから、きちんとプロセスを踏まえていれば、あとは結果次第だ」ということをよく口にしていたから。それは野村克也さんの教えでもあるんですけどね。野村さんは「プロ野球の《プロ》とは、プロセスの《プロ》である」って言っていたというから。 里崎 ボビーの場合は、ホームランを打たれたときには「オーケー、オーケー、このやり方がダメだとわかったことが収穫だ」と考える監督でしたね。こういう上司の場合は気が抜けないですよ。いつもプロセスを見られているから。逆に言えば結果論で語る上司は、きちんとプロセスを見ていないケースが多い。だから気を抜いたり、息を抜いたりすることもできるしね。 五十嵐 確かに、いいコーチって、きちんと選手のことを見ていますよね。練習態度を見て、その選手がどんな意識を持っているのかをちゃんと把握している。そういうコーチだと、選手としても真剣にアドバイスに耳を傾けるようになるし。 里崎 人間って、いちばん安心できるのは「きちんと自分のことを見ていてくれているな」と実感を持てることだと思うんですよ。それは指導者と選手だけでなく、親と子でも言えることだと思うけど。現役時代の話だけど、いろいろ考えた結果、ちょっと打ち方を変えたりするでしょ。それでコーチとかに「今、どうなっていました?」ってアドバイスを求めたときに、「見てなかったから、次の打席で見てみるよ」なんて言われたら、「コイツに聞くのは一生、やめとこ」って思うよね(笑)。 五十嵐 やっぱり、選手としたら迷っているときこそアドバイスがほしくなるものだから、そのときに「見ていなかった」は絶対ダメ。もし自分が監督やコーチだったら、練習内容や態度だけでなく、日常生活まで気を配って観察するようになると思いますね。コーチというのは「あれをしなさい、これをしなさい」というのがメインの仕事じゃなくて、こちらから何かを尋ねたときに、適切なアドバイスを送ることができるかどうかのほうがずっと大事なことですから。 里崎 そもそも、こちらから言わないと見てくれないのなら、その後にもらうアドバイスも何だか当てずっぽうのように感じられるし。こちらから何も言わなくても、「あっ、今はこんなことを意識して取り組んでいるんだな」と自然に気がつくことができないのなら、そもそも指導者としての能力にも問題がある。そんな人の言うことに、いちいち自分が左右されたくないんで。