ゴミ屋敷になった実家の悲劇 片づけアドバイザーが語る
年末になると「いつかはやらねば」と思いつつ、先延ばしにしている実家の片づけが頭に浮かぶ人は多いはず。大切な書類がどこにあるのか。わからないまま親が認知症になったり、亡くなったりすると、大変なことになる。「実家片づけ」(ダイヤモンド社)を出版した片づけアドバイザーの石阪京子さん(57)にコツを聞いた。 【写真】片付けアドバイザーの石阪京子さんの道具 14年間で約1500軒の片づけに関わった石阪さん。実家片づけの相談は最近、10年前に比べて10倍ぐらいに増えているという。 例えば親の預金口座。親が認知症と診断されたとしても、実の子でも原則、手をつけることはできない。これで悲劇が起こったことがある。 関西圏に住む50代の女性の父親(当時90)は、息子と仲が悪く、母親の死後、1人でゴミ屋敷になった自宅で暮らしていた。3年前、認知症になって倒れたため、女性が入院させた。 生命保険証書も年金手帳も探し出せず、入院費などは女性が立て替えたという。 その後、父親は死亡。財産がいくらあるか、わからないまま、10カ月以内という相続税の期限が迫ったために手続きをしたところ、後から財産が見つかり、その分は追徴課税を取られた。とてつもない後悔と労力だったという。 「だからこそ、親が元気なうちに取り組むことが大事なんです」と石阪さん。 しかし、子が実家の片づけを言い出すと、9割の親は「自分たちでやる」と反対するという。時には「断固拒否」と激しいバトルになり、頓挫してしまうことも。本音がぶつかり合う親子ならではのストレスがあるという。 自身も、実家の片づけで壮絶なバトルを経験した。 本格的に取り組み始めたのは、2015年から。母親が神経系の病気にかかって足元がおぼつかなくなり、家で転んでケガをしたのがきっかけだった。 徒歩5分ほどの実家に通い、2階にあった母親の寝室を1階に移動。車いすが通れるよう、大型家具も減らした。ところが、ソファや棚などを捨てようとすると、父親が「まだ使える。もったいない」と猛反対。父親を説得しようとしたが、無理と判断。半ば無理やり捨て、食器棚の中もすべて出して、不用品を廃棄したという。 部屋が広くなると、車いすで台所に行けるようになった母親が父親に料理を教えるようになった。ただ、今では自省も兼ね、「頭ごなしに言うと前に進まない。時には親に寄り添うことも大事」と助言する。 実家の片づけでは、同時に、お金のことが記してある紙(書類)を確認して、親の資産を把握しておくことを勧めている。 亡くなってから親に借金があったことを知り、相続を放棄するという例もよくあるからだ。「お金のことは親子でも聞きにくい。とはいえ、生きている間にきちんと聞いておくことが大事」と話す。
朝日新聞社