「タンスから出てきた1,000万円、秘密にしておこう」→税務署「申告していませんね」…なぜ〈相続税の脱税〉はバレるのか?【税理士が解説】
相続税の脱税はなぜバレるのか?
上記で説明をしてきた脱税と見なされるケースですが、どのような経緯で税務署にバレてしまうのかが気になると思います。ここでは、税務署がどのように税務調査を行っているのか、その手法等について解説したいと思います。 税務署の調査能力は諜報機関にも匹敵 税務署の調査能力は、いわゆる007に代表されるようなスパイ組織にも匹敵すると例えられることがあります。税務署にはKSKシステムといって、日本国民のありとあらゆる所得や財産に関わる情報が集約されているデータベースがあるといわれています。たとえば、Aさんがテレビで「1億円の宝くじに当たりました!」という発言をすると、その情報がKSKシステムに入力されるようです。 また、税務署は強力な調査権限を持っていますので、たとえば、前述のタンスから1,000万円が出てきましたというケースで、相続人がその現金を手元に置いておくのが怖いから自らの名義の口座に入金したとします。税務署は相続税の税務調査のときに、相続人の預金口座も金融機関に照会をかけて自由に調べることができます。そこで1,000万円の入金があれば、当然その原資が気になり、脱税がバレてしまうということになるでしょう。 脱税を暴く税務署の調査手法 相続税の脱税を暴く税務署の調査方法を簡単に3つご紹介したいと思います。 ・ヒアリング 相続税の税務調査時に、相続人やその他利害関係者にヒアリングを行います。被相続人がどういった経緯で財産を築き上げたのか、どういった暮らしぶりか、生前の趣味は、相続人の職業や趣味は、などなどいろいろなことを聞かれます。一見関係なさそうな質問から、脱税の痕跡を発見するといったことも少なくありません。たとえば、海外旅行が趣味で年に何回も海外に行っていたという話をしたら、税務職員はその情報から、「もしかしたら海外に財産があるのでは?」と疑ったり、趣味が骨董品の収集でというと、「では、相続財産として計上すべき骨董品があるのでは?」と疑ったりします。 ・半面調査 銀行や生命保険会社に対して被相続人名義の預金の有無や流れを確認したり、また場合によっては被相続人と生前懇意にしていた個人に対して直接、調査を行ったりすることもあります。税務署は、強制的に調査できる強力な権限を持っていますので、情報の開示を正式に求められた場合には、金融機関などはその開示を拒むことはできません。 ・実地調査 相続税の税務調査はほとんどの場合、被相続人の自宅で行われます。自宅のタンスや床下、金庫等に計上漏れの財産がないか、また居間に飾ってある絵画にはちゃんと申告してあるかといった実地(現場)でわかることを調査します。通常の調査では、予告もせずに突然やってきて家中ひっくり返されるということはまずないです。しかし、それでも税務調査のときに、このタンスを開けてください、この金庫を開けてくださいといったことを要求されることは少なくありません。