成績優秀な子ども、素敵な旦那さん。何もかも持っているあの人が羨ましい… タワマンに住む家族のリアルな苦悩【書評】
一方、塾に通い始めた舞の息子は順調に成績を伸ばしており、小学6年生を目前に中学受験を強く意識しはじめていた。そんなとき、野球チームの練習で起きた子ども同士のケンカで息子が「お前なんて安い低層階に住んでるくせにっ!」といわれてしまう。周りの家族と自分たちを比較してしまった舞はマウントを取り合うママ友の一員になっていく。 そして物語は、低層階に住む舞や他の住人に対しマウントを取っていた、タワマンの42階に住む3人目の母・堀恵の視点に移る。専業主婦でお菓子作りが上手な恵はキラキラタワマン生活の象徴のような存在だったが、その裏にもさまざまな事情があるようで――。
舞が周囲の話に流され息子を「良い学校」に入学させようとしたことがきっかけとなり、少しずつ家族が歪んでいく。子どものやりたいことを制限してまで無理やり勉強させるのは、果たして本当に子どものためになるのだろうか。 本作を最後まで読めば、人からの評価ばかり気にするより大切なことがあるのだと思えるようになるはずだ。タワマンに暮らすキラキラした人たちの裏側にある悩みや葛藤を通して、家族にとって本当に大切なものとは何かを考えてみてもらいたい。 文=ネゴト/ 押入れの人