あの前原瑞樹が端役で終わるはずがなかった…鉄平の日記が黒塗りされた理由とは?『海に眠るダイヤモンド』第8話考察レビュー
朝子(杉咲花)との約束を破ってしまった鉄平(神木隆之介)
百合子(土屋太鳳)が賢将(清水尋也)との間に宿した新たな命もその1つ。賢将が探してきた論文によれば、被爆した人がのちに妊娠した場合、胎児の健康面に影響はないと結論づけられていた。 だが、原爆投下からまだ20年も経っていないため、子供が成長しても何の問題もないという保証はどこにもない。不安はある。だけど、今はその不安を分かち合える賢将がいる。それだけで、どれだけ心強いか。百合子にとっては、賢将の存在も生きる上での希望だ。 リナは進平という1つの希望を失った。そんな中、誠に原因不明の病気が見つかり、長崎の市立病院にかかることに。 付き添った鉄平は、そこでリナと進平が籍を入れておらず、誠の出生届も提出していないことを知る。神様はどれだけリナに試練を与えるのだろう。進平がいたから、彼女は荒木リナでいられたのだ。 鉄平は誠の出生届を出すために、リナと籍を入れたのかもしれない。リナに唯一残された誠という希望を守るために。人の幸せを誰よりも願う鉄平だから、きっとそうするだろうという納得感がある。 だが、そのために朝子との約束を破ってしまったことに鉄平は耐えられなかったのではないか。石炭は無事に見つかったが、いづみ(宮本信子)によると鉄平は間もなくリナと共に消息を絶ったという。
朝子と結婚したのは食堂の従業員だった虎太郎(前原瑞樹)
残された朝子は、食堂の従業員である虎次郎(前原瑞樹)と結婚したことが明かされた。前原瑞樹といえば、連続テレビ小説『らんまん』(2023、NHK総合)で神木隆之介と共演。神木演じる主人公・万太郎と、東大の植物学教室で切磋琢磨する藤丸を好演し、話題となった。そんな前原が、端役で終わるはずがなかったのだ。 鉄平の日記にはところどころ黒塗りや破り去られたところがあり、玲央はそこに朝子への思いが書いてあり、2人を引き裂きたい虎次郎が隠蔽したのではないかと予想する。 だが、彼の息子である和馬(尾美としのり)が、いづみを社長の座から引きずり下ろすために偽造した認知症の診断書を破り捨てる姿を見て、その予想は間違っているのではないかと思った。 おそらく、そこに朝子への思いが綴られていることは間違いないだろう。だけど、それを黒く塗り潰したり、破り捨てたのは鉄平自身で、朝子に対する未練を断ち切ろうとした跡なのではないだろうか。 「裏切られることには慣れてる」という言葉からも、いづみは鉄平に裏切られたと感じている。本当のところ、鉄平は何を思っていたのか。それを知るのは、玲央やいづみの孫・星也(豆原一成)、千景(片岡凜)が鉄平の手がかりを追う中で偶然繋がった、百合子と賢将の息子・孝明(滝藤賢一)なのかもしれない。 鉄平が生きているかどうかは定かでないが、せめて朝子を裏切ったわけではないということだけでも明らかになることを願う。きっとそれが分かるだけでも、いづみがこれからを生きるための希望になるはずだから。 【著者プロフィール:苫とり子】 1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
苫とり子