上原が苦言 ファンの乱入が繰り返されるメジャーリーグ
今年の4月8日、敵地でのヤンキース戦中に起きたファンの乱入行為について、相手チームのオリオールズ、ジョーンズ外野手は地元紙に「もっと罰を厳しくすべき。スパイクで蹴り上げてやりたいよ。だって、馬鹿げた行為だからね」と厳しい意見を述べたが、実際、2002年にはロイヤルズのガンボア一塁コーチが乱入したファンに暴行を加えられた例もあり、単に、試合の妨げとなるだけではなく、安全面という見地からしても断じて許される行為ではない。
現在、メジャーの試合でフィールドに乱入すれば、大抵、警備員に取り押さえられた後、不法侵入の容疑で留置所に連行され、場合によっては数日身柄を拘束され、裁判所への出頭が命じられる。例えばニューヨーク市議会は2005年に、プロスポーツイベントでの騒動行為に25,000ドル(約250万円)以下の罰金を課す条例が施行された。フィールドへの乱入だけでなく、物を投げ入れたりする行為も対象になる。犯罪歴にも残るし、保釈金や弁護士への費用なども掛かり、生涯、球場出入り禁止となる場合もある。 フェンウェイパークで起きた乱入騒動の首謀者は10代の未成年だったが、そもそも、乱入行為の動機は、テレビに映りたい、目立ちたいというケースも多い。実際、乱入者が出ると、球場に囃し立てる歓声や笑いが起きることは多く、拍車を掛ける。そのため、MLBでは乱入行為を放映せず、警備員が取り押さえている間、他の映像を流すなど無視を貫く姿勢を打ち出しているが、最近は一般人が携帯電話のカメラで撮影した映像がYouTubeやツイッターなどのソーシャルメディアに投稿されるケースも多く、完全黙殺は難しい話だ。ア・リーグ東地区最下位に低迷するレッドソックスの試合には、プレーオフ争いの緊張感が失われている背景もある。夏休みの今は家族連れが多いが、米国の大学が新学期を迎える9月には学生のファンが増える見込みで、事実上の消化試合に今後もファンの乱入が増えるケースが懸念されている。 折しも、同じ16日には英国で行われたサッカー・プレミアリーグの開幕戦、トッテナム・ホットスパー対ウエストハム戦で、事もあろうか、FKの際に観客がピッチに乱入して逮捕される騒ぎが起きた。高額年俸を稼ぐ現在のスポーツアスリートたちは、球団にとっての投資資産であり、万一の場合は賠償問題にも発展しかねない。スポーツイベントで乱入騒ぎが増えれば、安全面から主催者側が境界線を強化するのは当然で、そうなれば、増員された警備員が武装したり、侵入防止のためのフェンスやネットなどでフィールドと観客席が遮断されたり、せっかく、グラウンド目線で観戦できるメジャーの醍醐味が失われることになりかねない。一瞬一瞬に、それこそ命がけでプレーしている選手にとってもそうだが、スポーツファンがあるべき姿でスポーツを楽しむためにも、上原の「やめて頂きたい」は、もっともな発言である。